サイゾーウーマンコラム『ロンバケ』幻の企画書 コラム 佃野デボラの「味コン」!! 『夕暮れに、手をつなぐ』脚本家・北川悦吏子の過去作『ロンバケ』を伝説の「企画書」とともに味わう 2023/04/01 17:00 佃野デボラ(ライター) 佃野デボラの「味コン」!! 北川悦吏子大先生の“驚くべき才能”がうかがい知れる、伝説の「企画書」 件の『ロンバケの裏側』には、「地雷を踏む」という言い回しの“発明者”は自分であると鼻高々に語る、若かりし大先生のインタビューをはじめ、制作の裏話が収められているのだが、見逃してはならないのが、『ロングバケーション』が実現に至る数年前から温めていたという、大先生自らワープロで作成した「企画書」が大写しになる場面だ。そこには、以下のように記されている。 ======== 『Best Freinds』(仮) 〜ひとりじゃないってば〜 『男と女だから、いい友達になれるってことだってあるんだ』 ◇一途な女と、遊び人男の、ハートフルストーリー◇ 相沢南は、正攻法な女の子。 好きな男の人にはいつも、一途。 会計事務所をやっている恋人の、涼とは、もう一年半のつきあい。そろそろ、プロポーズされるかな…という期待に胸を膨らませている。 ある日、南は、涼に、会社から愛のファックスを送る。 (※南は、住宅会社、xxホームに勤めるOL。時には、システムキッチンの窓を飾ったり、モデルハウスの受付なども、やったりする。) 「今日、〇〇(場所)で×時に待ってるからね。涼ちゃんへ。あなたのミナミより。P.S I LOVE YOU」なんて書いて、涼の事務所にファックスする。 ======== (※原則すべて原文ママ) これが、かの、社会現象にもなったトレンディドラマ『ロングバケーション』の企画書であると、にわかには信じがたい。まるで中学生が書いた漫画のアイデア、あるいは「夢ノート」のような内容ではないか。さらに、タイトルの綴りは間違っているわ、「『正攻法な女の子』ってどういう日本語よ?」と頭を抱えるわ、近年作にも通ずる「仕事描写のグダグダさ」がこの時点で見て取れるわで、“北川大先生マニア”にとっては、たまらない内容だ。 ましてや、ヒロインの名前が「南」であること以外、舞台設定も人物造形もあらすじも、何ひとつ『ロンバケ』と重ならない。これはつまり、「完成品」の『ロンバケ』に至るまでに、同作を担当した亀山千広プロデューサーの「テコ入れ」によって相当な“ブラッシュアップ”がなされたと考えられる。 次のページ 『ロンバケ』制作時の96年には、まだPの「制御」が機能していた? 前のページ1234次のページ 関連記事 『夕暮れに、手をつなぐ』、北川悦吏子作品あるあるを徹底解説――令和とは思えない“昔懐かしさ”の正体『ちむどんどん』は対象年齢3歳~。ヒロイン・暢子一家の借金問題だって“なんとかなる”、史上最も“やさしい”朝ドラこれぞ脚本家・北川悦吏子の真骨頂! 『半分、青い。』からさらにパワーアップした『ウチの娘は、彼氏が出来ない!!』をホメゴロス!『M 愛すべき人がいて』浜崎あゆみ役・安斉かれんの“奇跡のような演技力”をホメゴロス!朝ドラ『半分、青い。』脚本家・北川悦吏子の“革命的な表現手法”“トレンディ霊力”をホメゴロス