佃野デボラのホメゴロシ!

『M 愛すべき人がいて』浜崎あゆみ役・安斉かれんの“奇跡のような演技力”をホメゴロス!

2020/05/02 19:00
佃野デボラ(ライター)
『M 愛すべき人がいて』(テレビ朝日系)公式サイトより

テレビ・芸能ウォッチャー界のはみ出し者、佃野デボラが「下から目線」であらゆる「人」「もの」「こと」をホメゴロシます。

【今回のホメゴロシ!】話題のドラマ『M 愛すべき人がいて』ヒロイン・安斉かれんの奇跡的な野面(のづら)ポテンシャル

 とんでもない女神が降臨したものだ。一体どこでこの逸材を見つけてきたのか。話題のドラマ『M 愛すべき人がいて』(テレビ朝日・Abema共同制作)でヒロインを演じる安斉かれん。彼女の唯一無二の存在感に、いま多くの視聴者が目を奪われている。

 浜崎あゆみの半生を描いた小松成美氏の小説『M 愛すべき人がいて』(幻冬舎)を原作とし、オリジナル要素を加えて実写化した本作品は、往年の大映ドラマ的ドラスティックさと頓狂さを前面に押し出し、視聴者がSNS実況で盛り上がるための仕掛けを随所に仕込んだ、いわゆる「ツッコミ待ちドラマ」だ。放送開始前は、いかにも辣腕テレビマンと広告マンが「周到にマーケティングして作りました」という作為が匂って、やや鼻白んだものだが、第1話冒頭、港にて「平成の歌姫・アユ」に扮した安斉が「あの日も海を見ていたな……」というキメ台詞とともに、面白サングラスをスチャッと外した瞬間、こちらの色眼鏡もふっ飛んだ。「このオリジナリティあふれる“抑揚”……ただ者じゃない……」。そこには作為も目論見も軽く飛び越えた「奇跡」があった。

 物語は、生まれ育った福岡の海を前に、アユが「私、東京に行って夢を叶える!」と、ふわっとした野望を語り、上京するところから始まる。初めて降り立った渋谷の街を歩き「(ベタ凪ぎの抑揚で)東京っておっきいんだな〜」とビルを見上げるアユ、「(驚天動地の演技力で)ここがベルファイン? すごい階段」と六本木の巨大ディスコに入店するアユ。もう目が釘付けである。


 上京後も三流タレントとして鳴かず飛ばずだったアユは、のちに三浦翔平演じるレコード会社「A VICTORY」の専務マックス・マサ(エイベックス会長CEO・松浦勝人がモデル)にその原石としての価値を見いだされ、スーパースターの階段を駆け上っていくのだが、その前段で「ブレーク前の垢抜けない田舎娘」の雰囲気をいかに自然に出せるかが肝であり、このドラマの勝敗はそこに賭かっていると言ってもいいだろう。その点において安斉ほどの適役はおらず、これこそが演技経験ゼロ、何色にも染まっていない彼女がアユ役に抜擢された理由ではないだろうか。

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