サイゾーウーマンコラム『ロンバケ』幻の企画書 コラム 佃野デボラの「味コン」!! 『夕暮れに、手をつなぐ』脚本家・北川悦吏子の過去作『ロンバケ』を伝説の「企画書」とともに味わう 2023/04/01 17:00 佃野デボラ(ライター) 佃野デボラの「味コン」!! 『ロンバケ』制作時の96年には、まだPの「制御」が機能していた? さらに驚くことに、遡って12日夜の投稿で大先生は、「南(山口智子)が花嫁衣装のまま爆走して、息を切らして瀬名(木村拓哉)の部屋に駆け込んでくる」という第1話冒頭シーンについて、うれしげにこう語っている。 《あの出だしは、やはり賛否両論ありました。作り手の中でね。もうちょっと普通なOLさんの話とかにしたらどうでしょう?と言われた記憶が。視聴者も見やすいですよ、と。覚えてるってことは、胸に刺さったんですよね。その言葉。それもそうだろうなあ、と。でも、あれがやりたかったんだと思います。》 あれれ? 話が食い違いやしませんか大先生。「企画書」を読む限り、最初にこのドラマを《普通なOLさんの話》に設定していたのは大先生ですよね……? 27年の歳月を経ると、ここまで記憶に“補正”がかかるものなのでしょうか? さて、北川大先生の「輝かしい過去の栄光」である、最高視聴率36.7%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を記録したこの『ロングバケーション』。96年制作ゆえの「時代感」と「古臭さ」はあるものの、『半分、青い。』(2018年/NHK総合)、『ウチの娘は、彼氏が出来ない!!』(2021年/日本テレビ系)、『夕暮れに、手をつなぐ』といった近年の「依代三部作」に比べれば、大先生による登場人物への自己投影は控えめで、大分見やすい作りとなっている。おそらく亀山Pの「舵取り」と「導き」が相当に効いているのだろう。 とはいえ、「サバサバ」と「ガサツ」を履き違えたヒロイン・南の人物造形、南が粗暴な言動を繰り出して相手の反応を見る「試し行為」、大先生と家族(ここでは実兄)の思い出を作劇に組み込んだ、有名な「スーパーボール」のシーンなど、のちの「北川作品あるある」に通ずる“メソッド”の萌芽が感じられて趣深い。 あれから27年。すっかり“大御所”となった北川大先生の近年作には、プロデューサーによる「制御」が効いていないのではないかと感じられるものが多い。大先生とドラマプロデューサーの「パワーバランスの変化」に想いを馳せながら、在りし日の『ロンバケ』を見てみるのもいいだろう。ドラマのスタート地点である、《Best Freinds(仮)》の「企画書」の文面を反芻しながら鑑賞するのも一興だ。 ※《》内はすべて原文ママ。 『夕暮れに、手をつなぐ』、北川悦吏子作品あるあるを徹底解説――令和とは思えない“昔懐かしさ”の正体テレビ・エンタメウォッチャー界のはみ出し者、佃野デボラが「下から目線」であらゆる「人」「もの」「こと」をホメゴロシます。 【今回のホメゴロシ!】「恋愛至上主義...サイゾーウーマン2023.03.25 これぞ脚本家・北川悦吏子の真骨頂! 『半分、青い。』からさらにパワーアップした『ウチの娘は、彼氏が出来ない!!』をホメゴロス!テレビ・芸能ウォッチャー界のはみ出し者、佃野デボラが「下から目線」であらゆる「人」「もの」「こと」をホメゴロシます。 【今回のホメゴロシ!】日テレ水10ドラマ...サイゾーウーマン2021.01.27 朝ドラ『半分、青い。』脚本家・北川悦吏子の“革命的な表現手法”“トレンディ霊力”をホメゴロス テレビ・芸能ウォッチャー界のはみ出し者、佃野デボラが「下から目線」であらゆる「人」「もの」「こと」をホメゴロシます。 【今回のホメゴロシ!】Twitterと同時進行で...サイゾーウーマン2018.06.13 前のページ1234 佃野デボラ(ライター) ライター。くだらないこと、バカバカしい事象とがっぷり四つに組み、掘り下げ、雑誌やWebに執筆。生涯帰宅部。 最終更新:2023/04/01 17:00 北川大先生マニアの興奮がビシバシ伝わってくる1本 関連記事 『夕暮れに、手をつなぐ』、北川悦吏子作品あるあるを徹底解説――令和とは思えない“昔懐かしさ”の正体『ちむどんどん』は対象年齢3歳~。ヒロイン・暢子一家の借金問題だって“なんとかなる”、史上最も“やさしい”朝ドラこれぞ脚本家・北川悦吏子の真骨頂! 『半分、青い。』からさらにパワーアップした『ウチの娘は、彼氏が出来ない!!』をホメゴロス!『M 愛すべき人がいて』浜崎あゆみ役・安斉かれんの“奇跡のような演技力”をホメゴロス!朝ドラ『半分、青い。』脚本家・北川悦吏子の“革命的な表現手法”“トレンディ霊力”をホメゴロス 次の記事 中村嶺亜、不憫の歴史 >