サイゾーウーマンカルチャーインタビューろうの映画監督が気付いた健常者との壁 カルチャー 映画『Start Line(スタートライン)』監督インタビュー 「聞こえない人をわかって」とは思わない! ろうの映画監督が語る、健常者との“壁” 2016/09/02 19:00 インタビュー ――映画を通して知らない世界を経験したり、それを伝えるのが監督のドキュメンタリー映画なのですね。 今村 でも今は“映画で変えていく”という考えは違いますね。『Start Line(スタートライン)』を撮って変わりました。耳が聞こえない人の気持ちを周囲の人はわからないから、それを理解してもらうということを考えていましたが、この映画を撮って、自分は耳が聞こえないから……と、自分で壁を作っていたことがわかったんです。自分が聞こえないからコミュニケーションが難しいのではなく、ヘタなだけと気付いたので、今は「聞こえない人のことを映画で伝えなければ」という気持ちはなくなりました。 ――今作は、監督にとって大きいものになったのですね。 今村 まさにターニングポイントになった作品で、この映画がそのまま自分のスタートラインです。次回作のことも考えていますが、まだどういうテーマで行くか決まっていないんです。 ――今回と同じように監督がいろいろ体験をしていく映画になりそうですか? 今村 いえいえ、私は今回いっぱい出ていますから、もういいです(笑)。 コミュニケーションがヘタと話す今村監督ですが、インタビューは笑いが絶えずにぎやかに行われました。「みなさんがいろいろ聞いてくださるからです」と監督は謙遜するものの、きっかけさえあれば、監督のコミュニケーション術はパっと花開くような気がします。その証拠に映画は、監督が叱られたり、落ち込んだり、涙したりするシーンが何度もありますが、決して重くなく、軽やかで希望に満ちています。監督の前を向く姿と、ユーモアのセンスが映画を明るく照らしているからです。耳が聞こえても聞こえなくても、コミュニケーションの悩みは同じ。そこへ飛び込み葛藤する姿に心が動かされます。 (斎藤香) 今村彩子(いまむら・あやこ) 愛知県名古屋市出身/ Studio AYA代表 ドキュメンタリー映画監督。『珈琲とエンピツ』(2011)東日本大震災の被災した聞こえない人を取材した『架け橋 きこえなかった3.11』」(2013)などの作品がある。 ■『Start Line(スタートライン)』 2016年9月3日より、新宿・ケイズシネマほか全国順次公開 公式HP 前のページ1234 最終更新:2016/09/02 22:27 Amazon 『わかりあえないことから──コミュニケーション能力とは何か (講談社現代新書)』 話がおもしろいのは、声がある人だけじゃないって気づいちゃうよ 関連記事 「健常者が考えつかない世界がある」身体障害者の劇団主宰が語る、障害者にしかできない表現「男に媚びを売ってポジションをつくる女が増えている」ピンク映画界の巨匠が語る、現代女性の生き方川崎の団地老人のドキュメンタリー『桜の樹の下』、孤独死を越える「1人で生きる力」批判なんて気にしない! ゴージャス松野とビッグダディが説く「自分らしい生き方」介護現場でセクハラが多い理由 見て見ぬ振りをされた高齢者の性 次の記事 S・タイラーの娘、ダイエット商材の裏側を告発 >