【連載】わが子から引き離された母たち

家の購入で夫とけんかして離婚の危機! 義父の叱責やワンオペ育児で疲弊した妻の苦しみ

2021/03/29 21:00
西牟田靖

ワンオペ育児に疲れて、家を買うことを提案

――結婚後の生活は?

 正社員にならないかと誘われた会社を辞め、転職して仕事を続けつつ、2人で社宅に住み始めました。そして、その年の12月、長男を出産しました。当時は幸せでした。子どもは生まれるととてもかわいく、人生でこんな宝物が生まれたことが奇跡だと思いました。生まれる前は職場への申し訳なさもあり、職場復帰を早くしようと思った。しかし、実際に保育園に入れる時には、子どもと離れ難かった。保活も激戦区だったために、冬生まれで早めに入れざるを得ず、長男は生後わずか4カ月後の4月から保育園に預けていました。

――寝かしつけとか、出産直後の時期の育児はどうだったのですか?

 家庭内のルールは妻の私がほぼすべて決めていて、子どもたちの面倒を見るのは100%私でした。というのも、彼は優柔不断で物事を決めきれない性格。「なんでも決めていいよ」と普段から言っていたので、信頼して子どものことも任せてもらえていると思っていました。

 一方、彼は育児を素直に手伝ってくれていました。朝の保育園までの送りは彼が担当していましたし、頼めば洗濯とか買い物、オムツ替えといった家事・育児もやってくれました。ただし寝かしつけに関しては、ほぼすべて私でしたね。というのも、彼は子どもが嫌がるくらいいびきがうるさく、すぐにコロッと寝てしまう。もしものときを考えると、私がやるしかありませんでした。


――2歳下に女の子が生まれた後はどうでしたか?

 2歳差の女の子もすごくかわいく、お兄ちゃんも妹をかわいがっていました。将来、親に何があっても、兄妹で仲良く助け合っていってほしかったので、家族が増えたことは本当にうれしかったです。

 しかし、彼(元夫)との関係は悪化していきました。というのも、社宅は狭いし、ペットの犬もおり、狭い家の中で生活が回らなくなる。遠方の実家のフォローもない中、ほぼワンオペで2人の子どもを見て、日中仕事、夜間も授乳や子どものケア。彼は、言えば動くけれど、言わないと何もしない。

 そのうち、彼に何かを言うことさえ疲れてきてしまって、彼には会話もあまり求めなくなった。さらに、夜間は彼のいびきから逃れられない――という状況の中、彼に対するストレスが増していきました。今考えると、その頃、産後うつの傾向があったけれど、私は日中病院に行く時間もない、授乳中だから薬も飲めない。とりあえず、夜だけはゆっくりと静かに寝たい、休ませて……というのは毎日思って、彼にも伝えていました。

――打開策はあったんですか?


 ずっと家を買いたいと思っていまして。彼のいびきの問題も、寝室を別の階に分ければいいんじゃないか、と考えていました。あと長男も小学生となり、持ち家で落ち着いて過ごしたいと思い始めたことも購入の理由です。私自身、家族と実家で過ごした思い出はとても貴重でしたし、就職してからはプロジェクトごとに勤務地を転々としていたので、その反動から、同じ家という安定した環境で、家族みんなが思い出を積み重ねながら生きていきたいって思っていたんです。周りでも同様の家族が多かったので、普通のことだと思っていました。

――「実家に帰りたい」と言っていた彼を、説き伏せることはできた?

 ずっと折り合わず、話は平行線をたどりました。「実家に帰りたい」ということ以外に彼は「お金が足りない」と言っていて。「だったら私が稼ぐよ」って言って、同じ業界の職場へと転職をして、仕事を頑張った結果、数年かけて頭金に十分な貯蓄ができたんです。少なくとも、そこでお金の問題をクリアしたんです。「嫌だったら、家、売ればいいんだよ」と、彼には言っていました。それに彼自身、ファイナンシャルプランナーに複数回相談して「資金計画も全く問題ない」というお墨付きをもらって、お金の不安を解消していました。彼も納得した上で、家の購入へと進んでいったんです。そうして、何軒か家の内覧に行って、ローンの計画を固めて、18年のクリスマス前、予約に至りました。

子どもを連れて、逃げました。