老いゆく親と、どう向き合う?【2回】

父の遺産は1円ももらっていないのに――仲睦まじい姉妹の本音【老いゆく親と向き合う】

2019/04/21 21:00
坂口鈴香

“「ヨロヨロ」と生き、「ドタリ」と倒れ、誰かの世話になって生き続ける”――『百まで生きる覚悟』春日キスヨ(光文社)

 そんな「ヨロヨロ・ドタリ」期を迎えた老親と、家族はどう向き合っていくのか考えるシリーズ。今回は、姉妹の関係について考える。

 上沼恵美子が関西のテレビ番組で姉との確執を告白したと報道されていたが、親の介護が絡んでくると仲の良かった姉妹でも関係がこじれることは少なくない。週刊誌によれば、上沼の場合は母親の介護をきっかけに逆に修復したということだが……。

母を支え、父を看取ってくれた妹には感謝している

 河村良枝さん(仮名・49)は中国地方出身。大学入学と同時に上京し、そこで知り合った夫と結婚し家庭を持った。河村さんの両親は、妹・真由美さん(仮名・47)が結婚して家を出てからは長く2人で暮らしていたが、数年前、父親ががんで他界。闘病中は母と、同じ市内に住む妹が病院への送迎や看病を行ってくれた。


「当時、まだ母も70代前半で体力もありましたが、妹がサポートしてくれたおかげでずいぶん助かりました。私は、父が亡くなる前の半年ほどは毎月帰省していましたが、顔を見せに帰る程度。たいして役に立てたわけではありません。父が亡くなったときも、連絡をもらってから帰ったくらいです。母を支えながら、父を看取ってくれた妹には感謝しています」

 河村さんと妹は、若い頃から仲の良い姉妹だった。学生時代の一時期、一緒に住んでいたこともあるし、河村さんが東京で出産したときには、産後の手伝いに来てくれたのも妹だ。「私や家族が帰省してお客さんでいられたのも、妹家族がいてくれたおかげ」と、妹への感謝を忘れたことはない。普段のお礼も込めて、帰省したときには、母と妹家族を旅行に招待するなどの気配りも欠かさなかったつもりだ。

 父を亡くし悲しみに沈む母にとって、妹家族の存在は大きな慰めとなった。結婚の遅かった妹にはまだ小さな子どもたちがいて、孫が頻繁に母のもとを訪れたのが良い気晴らしになったようだ。父の死から数カ月もすると母は立ち直り、次第にもとの明るさを取り戻していった。

母の遺産 新聞小説 上