老いゆく親と、どう向き合う?

「夫は何もわかっていない」年末年始に帰省して「親孝行」が、自己満足に過ぎないワケ

2025/02/02 18:00
坂口鈴香(ライター)
写真AC

 “「ヨロヨロ」と生き、「ドタリ」と倒れ、誰かの世話になって生き続ける”――『百まで生きる覚悟』春日キスヨ(光文社)

 そんな「ヨロヨロ・ドタリ」期を迎えた老親と、家族はどう向き合っていくのか考えるシリーズ。

目次

「最期まで自分が母親を看る」義妹が覚悟を決めている
夫には絶対理解できない――負担は減るどころか、むしろ増えるだけ
災害時ボランティアだと思え

「最期まで自分が母親を看る」義妹が覚悟を決めている

 茂木早苗さん(仮名・62)は、この年末年始に夫だけ実家に帰省すると聞かされ、複雑な思いでいる。

 夫の実家は認知症の義母と独身の義妹が暮らしていて、義妹は仕事を辞めて義母の介護に専念していた。コロナ禍に入院した義母は半年以上、面会どころか様子も一切わからない状態になり、義妹は憔悴していたという。

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 幸い、義母は回復して退院、自宅に戻ることができた。ところが、長期間入院していた義母の介護状態は大きく後退していた。義妹のことはわかっているようだが、会話らしい会話もできなくなり、ほとんど寝たきりになってしまった。

 病院ではリハビリなどは行っていなかったのだろう。夫も義妹も衝撃を受けたが、義妹は以前にも増して義母の介護に打ち込むようになった。

「義母はデイサービスには行っていますが、夜中のおむつ交換や体位変換などは、義妹が2、3時間おきにやっているようです。私より若いのに、腰も背中もすっかり曲がってしまって……」

 義妹は、入院していた義母と半年以上会えなかったことがよほど堪えたのだろう。それほどの介護状態なのに、自分が介護をすると決めているように思えた。見かねた夫や親戚が、施設に預けたほうがいいのではないかと何度も勧めたが、義妹はかたくなに首を振るばかり。最期まで自分が母親を看ると言うのだった。

「義妹が覚悟を決めているのに、強引に引き離すこともできませんでした」

 夫は、自分が何もできないのがもどかしかったのだろう。「この年末年始は帰省する」と言い出した。

「ああ……と思いました。夫は何もわかっていないと」

夫には絶対理解できない――負担は減るどころか、むしろ増えるだけ

 わかっていない――年末年始に、たとえ兄とはいえ、いや兄だから、帰ってくるとその間義妹の仕事が倍増することが。

「夫としては、実家に帰って何かしら手伝うことで、義妹の介護負担を少しでも減らせると思っているのでしょうが、女の目から見ると、負担が減るどころか、どれだけ増えるか……昔の家なので、お客さん用の布団などは2階に置いてあるのですが、介護で疲れ果てている義妹は2階まで布団を取りに行く気力も体力もなくなっているんでしょう。ずっと前から、夫が帰省したときは貸し布団を使っていると聞いて、義妹の心身の負担が手に取るようにわかりました。使った後の布団を干して片づけるのも重労働ですから。貸し布団を使ったって、シーツは出さないといけないし、洗って干さないといけないのは変わらないのです」

 夫は「年末年始くらい実家に帰って何が悪い」としか思っていないだろう。茂木さんが義妹の気持ちを代弁しても、「親に会いに行くのに気兼ねしないといけないのか」と反論するのが目に見えている。

 女の大変さが、夫には絶対理解できないと思う。へたに説得しても反発するだけだ。「帰省して親孝行をするなんて、夫の自己満足に過ぎない」なんて言ったら、きっとキレるだろう……。

 夫とはわかり合えない。大きな溝を感じるのは、こんなときだ。定年後の夫婦の危機もこんなところからきているのかもしれないとさえ思う。

 だから、夫の帰省をやめさせることは諦めている。義妹には申し訳ないが、どうしようもない。義妹の負担を思い、「ああ……」とため息をつくばかりだ。

災害時ボランティアだと思え

 茂木さんの話を聞いて、都内に住む男性から聞いた言葉を思い出した。その男性も60代。実家は中国地方にあり、兄が要介護3の母親と同居。結婚した妹も近くに住んでいるので、男性は「ほとんど役に立っていない」と自認する。

「その分、お金でと思うこともないわけではありませんが、それもちょっと違うかなと。できるだけ頻繁に帰省して、兄妹に感謝の気持ちを伝えるようにしています。その際、義姉に迷惑をかけたくないので、実家には泊まらずホテルを取るようにしています」

 彼は妻との関係も「そう悪くない」と、これも自認している。ホテルに宿泊する気遣いのできる彼だから、おそらく妻の認識とも大きくズレてはいないだろう。

  茂木さんの夫が帰省中、妹に替わって夜中の介護を担うつもりなら、次回から寝袋を持参することをお勧めしたい。

坂口鈴香(ライター)

坂口鈴香(ライター)

終の棲家や高齢の親と家族の関係などに関する記事を中心に執筆する“終末ライター”。訪問した施設は100か所以上。 20年ほど前に親を呼び寄せ、母を見送った経験から、 人生の終末期や家族の思いなどについて探求している。

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最終更新:2025/02/02 18:00
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