サイゾーウーマンコラム夫だけ実家へ帰省するも喜べない コラム 老いゆく親と、どう向き合う? 「息が詰まりそう」夫と二人きりの年末年始、夫だけ実家へ帰省することに……手放しで喜べないワケ 2025/01/19 18:00 坂口鈴香(ライター) 老いゆく親と、どう向き合う? 写真AC “「ヨロヨロ」と生き、「ドタリ」と倒れ、誰かの世話になって生き続ける”――『百まで生きる覚悟』春日キスヨ(光文社) そんな「ヨロヨロ・ドタリ」期を迎えた老親と、家族はどう向き合っていくのか考えるシリーズ。 目次 ・年末年始、帰省する家族を迎え入れる側の大変さ ・毎日夫が家にいる年末年始を考えると憂鬱 ・夫だけ実家に帰省することに……義母は8年前に認知症を発症 年末年始、帰省する家族を迎え入れる側の大変さ 1月も半ばを過ぎた。読者の皆さまはどんな年末年始を過ごされただろうか。SNS界隈では、夫の実家に行くのが苦痛という話で盛り上がっていたようだが、都会に住む子どもやきょうだい家族を迎え入れる大変さもわかってほしいという切実な声も多く目にした。子どもが中年以降になると、帰る実家があるだけ幸せだとも思えるのだが。 先日、若年性認知症の妻を10年以上在宅で介護する60代男性が、年末年始は妻をショートステイに預けて、実家に帰省するとおっしゃっていた。60代で親が健在とはなんと幸せなことよ。 詳しい事情はわからないが、少なくとも日々の妻の介護を忘れて、親孝行を兼ねてゆっくりお正月を過ごすつもりなのだろうと推測され、少しホッとした。 それと同時に、彼を受け入れる老親、特に母親は、息子が帰省してうれしい半面、気が重くはないのだろうかとも思った。もしかすると、老親と同居する長男家族とか、娘家族などがいるのかもしれない。そうだとしても、老母や長男の嫁、娘は正月の準備に加えて、遠方からの泊まり客(きょうだいではあるが)を迎える準備で大忙しだろう。 そんな想像をしたのも、茂木早苗さん(仮名・62)の話を聞いたからだ。 毎日夫が家にいる年末年始を考えると憂鬱 茂木さんの両親はすでに亡い。家を出ている子どもたちは独身なので、年末年始に帰省しても特に気を使うこともない。もう何年も変わらない家族水入らずのお正月だ。 60代半ばの夫は、長く単身赴任を続けていたが、いよいよ再雇用先の会社も定年を迎えた。 「毎日夫が家にいるという状況にまだ慣れなくて、息が詰まりそうです(苦笑)。私も還暦を過ぎて、パート勤めをそろそろ辞めようかなと思っていましたが、毎日夫と二人で顔を突き合わせているのも息苦しいので、もうしばらく勤めを続けようと思い直したところです」 そんな茂木さんは、自分の仕事が休みになる年末年始を考えると憂鬱だった。夫は朝から晩までテレビを見ながら、飲み食いするばかりだろう。 10年ほど前までは、家族で東北にある夫の実家に帰省していたが、義父が亡くなり、義母と独身の義妹二人の生活になると、家族で帰省するのも申し訳なくなり、夫だけが帰省するようになっていた。さらにコロナ禍になってからは、ウイルスを持ち込まないよう夫も帰省を遠慮していたのだ。 「今年はコロナ明けということもあり、また夫だけ帰省することにしたと言うんです」 茂木さんは、夫の不在を喜んでいるのかと思いきや、複雑な表情なのにはワケがあった。 夫だけが実家に帰省することに……義母は8年前に認知症を発症 義母は8年ほど前に認知症を発症したのに加えて、しばしば体調を壊し入院することも増えていた。夫の妹は長年勤めていた会社を辞めて、在宅で介護することにした。定年にはまだ間があったが、独身ということもあり、ずっと支えてくれていた母を自分が看てやりたいという気持ちが強かったようだ。 「そのころまでは、義母もデイサービスに通っていたし、介護もそう大変ではなかったようなのですが、コロナ禍中に義母が入院して、義妹が一気に追い込まれたのです」 義母の入院で、義妹の介護の負担が減る――と安心したのは、外野にいる人間だったからかもしれない。義妹は、入院した義母に面会するどころか、どんな様子なのかも一切わからず気をもむばかりだった。 コロナ禍で、病院の大変さは頭では理解できていても、半年以上まったく会えなくなると話は別だ。介護施設なら、まだオンライン面会やガラス越しの面会ができたかもしれなかったが、病院ではそうした対応は望めなかった。義妹は心労ですっかり憔悴してしまったという。 「どちらが病人だかわからないくらいでした。心配でしたが、離れている私たちにはどうしようもなくて……」 ーー後編は2月2日公開です。 坂口鈴香(ライター) 終の棲家や高齢の親と家族の関係などに関する記事を中心に執筆する“終末ライター”。訪問した施設は100か所以上。 20年ほど前に親を呼び寄せ、母を見送った経験から、 人生の終末期や家族の思いなどについて探求している。 記事一覧 最終更新:2025/01/19 18:16 帰省して見えた本音と現実、ありましたか? 関連記事 仲良し姉妹の「3世帯同居」、母の介護も「妹と協力していけば大丈夫」と思っていたが……「震えた字で『父ちゃんのバカ』って」――母は晩年、夫が浮気相手と一緒にいるという「幻覚」を見ていた「義母はかわいそうだった」夫と義母のダブル介護を背負った嫁の決断【老いてゆく親と向き合う】「あの人を父親とは思っていません」父を捨てると宣言した娘、その理由は?「もうお母さんの面倒は見きれない」――“親を捨てた”子どもの事情とは? 次の記事 メルカリでSK-IIを定価以下で購入もまさかの“盲点” >