知られざる女子刑務所ライフ182

年末年始は刑務所が「老人ホーム化」? ホームレスになるよりムショで……ありがちな手口とは

2023/11/12 17:00
中野瑠美改め瑠壬(作家)
写真ACより

 覚醒剤の使用や密売などで逮捕起訴され、通算12年を塀の中で過ごした後、その経験を基にさまざまな活動を続ける瑠壬(るみ)さんが、女子刑務所の実態を語る「知られざる女子刑務所ライフ」シリーズ。

年末に近づくと、ムショや拘置所に入る人が増加

 今年も、もうあと2カ月ですね。広告は来年の年賀状やおせち料理やカレンダーばっかりで、ほんまに1年あっちゅう間です。

 結構前からですが、この時期になると、「ホームレスになるより懲役(受刑者)になって年を越そう」と思う人が出てきます。数えたわけではないですが、瑠壬が務めてた頃も年末年始はムショや拘置所で過ごす人の数は、体感的に多かった気がします。

 特に最近は、物価は上がるし、人手不足やのに高齢者は雇ってもらえませんから、行き場のないお年寄りが事件を起こして拘置所やムショで年越し、あるいは余生を送るみたいな感じになるらしいです。

 ゆうてもお年寄りですから、こないだの「86歳・元ヤクザ氏」の「拳銃立てこもり事件」みたいな元気な話はまずなくて、だいたいが「無銭飲食」か「万引」ですね。


 ホームレスになったり、無銭飲食や万引きをするのは、年齢とか関係ないですが、なんかお年寄りが多い印象があります。 せっかく長生きしても寂しいことです。

 どっちみち、お店は大迷惑です。まず弁償は期待できないし、警察の取り調べに時間を取られますから、何もええことはありません。

刑務所にはドライヤーもない

 前から書いてますが、「シャバはツライからムショに行こう」は、オススメできません。たしかに三食出ますし、寝るところもあって、お正月にはおせち料理も出ます。

 でもお風呂は真夏でも1日置きやし、どんなに寒くても水道の蛇口からは水しか出ません。朝は、超冷たい水で顔を洗うのです。ドライヤーもないので、入浴後は髪をちゃんと乾かせなくてマジ凍ります。

 最近は建て替えも進んでますから、北海道のムショとかはもしかしてお湯が出るかもしれませんが、聞いたことないですね。ドライヤーはないと思いますし。


 もちろん食べたいものも食べられへんし、本とか差し入れも制限あって、「自由」はほぼありません。

 それに、ムショに来てくれるようなお医者さんはもともと少ないのに、どんどん減ってますから、もし病気になったらアウトです。

 もうほんまに天涯孤独で、お墓にも入れないような身の上で、自由のない不便な生活に耐えられるのなら、まあまあ過ごせます。自分に興味がなくなる「セルフネグレクト」みたいな人は、刑務官の命令通り動くほうがラクなんですね。瑠壬みたいに「もっとビジネスで成功したい!」「もっときれいになりたい!」「もっとぜい沢がしたい!」とか思てる人には務まらないのです。って、その割に長く行ってましたが。

今の刑務所はヤクザよりも万引常習犯のほうが増加

 今どきのムショは、ヤクザよりも万引常習犯のおばあさんのほうが増えてるらしく、法務省も介護にはわりと取り組んでますね。刑務官が認知症の介護を勉強してるそうです。

 瑠壬もムショでは、お年寄りのお世話をさせてもらいましたよ。これは「エリート」の仕事です。ケガとかさせたら一大事ですからね。

 法務省がマジメにやってるのも、施設でお年寄りが亡くなったら大騒ぎになるからで、別にお年寄りを大事に思ってるわけとちがいます。とにかくなんでも「事なかれ主義」。「事件や事故を起こさないこと」が所長以下全員のミッションなんです。

 確かに現場には、優しい担当さんもいて、親身にお世話をしてくれる人もいてます。これはええことですが、優しくされるから、お年寄りはまたムショに戻ってきます。シャバに居場所ないから。

 ありがちな手口は、ムショを出てそのままタクシーに乗り、3万円くらい乗ったところで「お金がないです」と言って、そのまま警察へ直行されるやつですね。これも運転手さんは大迷惑です。

 居場所のない人たちが気兼ねなく住める寮みたいの、あればいいんですかね。瑠壬も考えましょうかね。

中野瑠美改め瑠壬(作家)

中野瑠美改め瑠壬(作家)

1972年大阪・堺市生まれ。覚せい剤取締法違反で4回逮捕され、合計12年の懲役を経験。出所後は、刑事収容施設への差し入れ代行業や収容者と家族の相談窓口などを行う。現在は堺市内で「Night Space祭」を経営。著書『女子刑務所ライフ』(イースト・プレス)がある。

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Instagram:@rumichibi1209

瑠壬公式YouTube

最終更新:2023/11/12 17:00
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