サイゾーウーマン芸能テレビドラマレビュー『ザ・ノン』向いていない仕事の辞め時 芸能 『ザ・ノンフィクション』レビュー 『ザ・ノンフィクション』30歳アツシ、卒検13回不合格が意味すること「人力車に魅せられて ~夢と涙の浅草物語~」 2022/10/16 13:30 石徹白未亜(ライター) 『ザ・ノンフィクション』レビュー 10月16日放送の『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)、テーマは「人力車に魅せられて2 ~夢と涙の軽井沢物語~」。7月に放送された「人力車に魅せられて ~夢と涙の浅草物語~」の続編となり、前回から引き続きアツシの姿を追う。 7月放送当時のアツシは30歳。東京・浅草で一人前の俥夫(しゃふ。人力車を引く人)になるべく励んでいた。もともとはメジャーデビューも果たした歌手で、その後はテーマパークのパフォーマーとして活躍していた経歴を持つが、コロナ禍の影響で職を失い、俥夫を志すようになったという。しかし、目標を持って努力を続けても、なかなか検定を突破できない日々が続いていた。 今作は、浅草では俥夫の道を諦めたアツシが、新天地の軽井沢で再び人力車を引くべく研修に取り組む姿を追うという。そこで続編のオンエアに合わせて、7月放送回の番組レビューをあらためて紹介したい。 (初出:2022年7月4日) 日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。7月3日の放送は「人力車に魅せられて ~夢と涙の浅草物語~」。 『ザ・ノンフィクション』あらすじ 東京・浅草観光の名物「人力車」。多くの同業者がしのぎを削る中、赤いはんてんがトレードマークの「東京力車」は、SNSを駆使した発信を続けるなどして勢力を伸ばしており、女性の俥夫(しゃふ。人力車を引く人)も多く活躍している。 東京力車で俥夫になるためには社内研修の卒業検定に合格する必要がある。番組内では現役大学生俥夫も紹介されており、スムーズに合格する人もいるようだが、10回近く検定を受け続けても合格できない「研修生」もいる。 研修生で最年長となる30歳のアツシは、もともとはメジャーデビューも果たした歌手だったが、全く売れず。その後、テーマパークのパフォーマーとして活躍するも、コロナで職を失い、現在は俥夫を目指しているものの、なかなか検定を突破できない。 アツシは何度も同じミスを指摘されてしまうようで、後方確認など人力車を走行させるにあたっての基本的な交通ルールに関するものから、客への地図の見せ方がなってないなど、接客に関するものまで及ぶ。あとから入った後輩が次々と追い抜いて俥夫になっていく状況だ。 それでもアツシは諦めず、朝は誰よりも早く出社し、トイレ掃除などをこなす。その姿に心を動かされ、指導担当の押木は業務時間外でアツシの特訓を行うことにする。しかし、満を持して挑んだ12回目の試験も不合格。 それまで注意されていた交通ルールの順守や接客に問題はなかったものの、ツアー時間は「1時間くらい」という顧客役の要望に対し、20分オーバーしてしまったためだ。 そこで気持ちが折れてしまったのか、それ以降の練習は身が入らず、アツシは東京力車を辞める。スタッフのインタビューでは指導してくれた押木に応えられなかった申し訳なさを話していた。 『ザ・ノンフィクション』去り際の見極めは難しい 番組最後、退職後にアツシは「ここまでうまくいかないのは生きてきて初めてだった」と話しており、学生時代や歌手時代、前職のショーの仕事などでは、そういったつまずきはなかったのだろう。 そもそも歌手時代はメジャーデビューをつかむなど、アツシは狭き門を突破する力はある。そうなると、俥夫は「向いてなかった」ということなのだろうし、向いてなかったら潔く辞めたほうがいいように思う。 番組を見る限り、もうちょっと早く辞めたほうがアツシ自身も挫折感を強く味わうことなく、指導した社長、押木などの負担も少なく済んだのではとも思う。だからといって、「見切りが早すぎる」のも問題だ。 『ザ・ノンフィクション』では以前、レストラン大宮で修行中の若者を追った回があったが、初日で音を上げた人がいた。さすがに、これは早すぎるだろう。「我慢が足りないだけ」では、向いているかどうかもわからないと思う。去り際の見極めは難しい。 次のページ 『ザ・ノンフィクション』この仕事は向いていないと、何をもって判断するのか? 12次のページ Yahoo 【CD】東京力車 / ニビイロトーキョー 〜チャンチキおけさ〜(通常盤A) 関連記事 『ザ・ノンフィクション』「やりたいことで生きていく」という機運の弊害「都会を捨てた若者たち 後編 ~27歳の決断~」『ザ・ノンフィクション』お父さんみたいにならないで、という母親の呪い「都会を捨てた若者たち 前編 ~27歳の迷い道~」『ザ・ノンフィクション』善意の人は、時に厄介「うちにおいでよ ~居候たちの家~」『ザ・ノンフィクション』現実を知らなかった40代の息子「ワケあり人生と部屋探し ~無理とは言わない不動産屋~」『ザ・ノンフィクション』こだわりと意地の境界線「泣かないでアコーディオン ~シングルマザーの大道芸人~」