オンナ万引きGメン日誌

最先端AIの目は万引き犯を見つけられるのか? ベテランGメンとの対決の結果はいかに――

2021/10/23 16:00
澄江(保安員)

「あの機械で捕まえたの?」「いえ、いつも通りにやっただけです」

 被害は、計6点、合計で3,000円ほどになりますが、お金は持っているというので商品の買い取りはできそうです。続けて身分確認をお願いすると、ここから車で30分以上かかる町にひとりで住んでいると話した女は、45歳。現在は無職で、生活保護の受給を検討していると話しました。店長を呼び出し、知り得た状況を報告した上で、事後の判断を仰ぎます。

「社内規則もあるし、病気だからって通報しないわけにはいかないですよ」

 結局、警察に引き渡された女は、商品代金の支払いと出入禁止の約束をさせられたうえで微罪処分とされ、その日のうちに帰宅を許されました。

「もしかして、あの機械で捕まえたの?」
「いえ、いつも通りにやっただけです。たくさんメールきましたけど、ちょっと違いましたね」
「やっぱり。さっきの人は、全然引っかかっていないのかな」

 実際に捕まった人のことを、AIが検知できていたかどうか店長が気にするので、端末のメールを一緒に確認してみたところ、50件を超える通知の中に彼女の姿はありませんでした。万引きする人を見極め、捕まえるのは私たちの仕事で、機械が解決してくれることはないのです。


(文=澄江、監修=伊東ゆう)

澄江(保安員)

澄江(保安員)

万引きGメン(保安員)歴40年以上。スーパーで品出しのパートをしている時に、万引き犯を捕まえたことがきっかけで、この世界に。現在も週5日は現場に立っている。

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最終更新:2021/10/23 16:00
万引き
AI技術の限界を感じる……