サイゾーウーマンカルチャー社会DV夫から逃げた私、母も同じだった カルチャー 居住支援の現場から【5】 「親子で同じような道を選んだね」母もまた、父に暴力を振るわれていたーー息子を抱えるシングルマザーの苦悩 2021/06/06 18:00 坂口鈴香(ライター) 社会 写真ACより 若宮由里子さん(仮名・53)は、長くゲーム依存症で仕事も長続きしなかった長男、祐樹さん(仮名・29)がようやく仕事を続けるようになり、一息ついたところだ。祐樹さんが幼いころから“良い子”だったのは、離婚原因ともなった夫のDVが関係していると思っている。しかし、祐樹さんは“反乱”の理由を、「僕には選択肢がなかったよね」という言葉で表していた。 ▼前回はこちら▼ 父親の暴力を見続けた息子は「すごく良い子」だったのに……「僕には選択肢がなかった」告白に、悩むシングルマザーの告白 若宮由里子さん(仮名・53)の長男、祐樹さん(仮名・29)はオンラインゲームに没頭し大学を中退、仕事も長続きしなかった。途方に暮れていたときに、居住支援法人「LA...サイゾーウーマン2021.05.23 息子が引きこもった原因は自分にある 若宮さんは、祐樹さんが引きこもったのは元夫の暴力とは無関係だと思っている。 「関係あるとすれば、私のほう。息子は優しいがゆえに意思表示ができず、大学入学まで引きずったこと、そして大学入学と同時にいきなり私の母の面倒も見ないといけなくなったこともそうです。気の強い母の言うことに『ノー』と言えなかったのでしょう。そして、母に輪をかけて気の強い私の元から離れたことも、引きこもる要因になったのではないかと思うんです」 いったん真面目に働いていた仕事に行けなくなったのも、若宮さんの母ミヨ子さん(仮名・78)が入院し、目がなくなったときだった。若宮さんはあれこれと推測してみるが、明確な答えは出ていない。やっと祐樹さんが半年仕事を続けることができているから、またもとに戻るのだけは避けたい。今はとにかくこのまま、何も起こらず、仕事を続けてほしい、それだけだ。 「余談ですが、息子たちには父親に会いたかったら会ってもいいよと言っています。祐樹は会いたくないとはっきり言います。2人が子どものころは元夫に連れて行かれるのが心配で、こっそり暮らしていましたが、今は2人とも大人になったので、その心配もないですし」 不思議なのが元夫の実家との関係だ。九州にある元夫の実家は、夫の弟が後を継いでいるが、今も交流があるという。息子たちが高校を卒業したときには遊びに行ったし、毎年お中元とお歳暮が送られてくる。 「元夫以外はみんないい人たちなんです。でも、元夫のDVのことは知っていて、私と結婚するときは、向こうの親も『同じことを繰り返すのか』と反対したそうです」 そして、さらに驚くことに、若宮さんの母ミヨ子さんも、夫つまり若宮さんの父親からDVを受けていたのだという。 「父が母を殴るたびに、近所のおばちゃんを呼びに行って、止めてもらった記憶があります。母は私に、『親子で同じような道を選んだね』と嘆いていました」 次のページ 母もDV被害者だった 123次のページ Yahoo 夫婦親子男女の法律知識 〔2016〕第3版 関連記事 不倫相手と出て行ったDV夫、連れ子と1歳児を残された妻――妹の家庭は「崩壊」していたDV夫とは関わりたくない。でも、子どもに会えなくてつらい気持ちは想像できる【別れた夫にわが子を会わせる?】初めて殴られたときDVだと気づいた。夫から逃げるためにシェルターへ【別れた夫にわが子を会わせる?】「DV加害者は自分が被害者という意識」愛しているはずの人に暴力を振るってしまう心理とは?『女性の死に方』に反映される社会情勢――DVによる死後ミイラ化した女性、家族への「迷惑」を恐れる自死