【連載】わが子から引き離された母たち

息子と会えないのは、魂を引き裂かれたようにつらい――嫌われても調停を続けて、母親の存在を示す

2021/01/30 16:00
西牟田靖

夫と義姉に進められていた引き離し工作

――誰かに相談はしたんですか?

 区の法律相談とか女性センター、子どもセンターみたいなところ、あちこち行きました。どうすれば息子との関係を絶たないで済むかということを聞きたくて。だけど、対応策を聞くことはできなかった。その代わり、「離婚したくないってことを演じて伝えたらどうですか」とか、「まずは婚姻費用調停を申し立てなさい」とか言われました。「DVだから逃げなさい」と言われて、シェルターに入るよう強めに勧められるのかと思ってたので、意外でした。

――その後、息子さんは公立中学へ行きますよね。そのときも彼は父親の実家へ通っていたのですか?

 そうです。毎日通っていました。放課後、息子は毎日、電車で彼の実家に通うんです。それで夜まで向こうで過ごした後、彼と一緒に帰って来ていました。そのうち息子は「PASMOに入れるお金ちょうだい」って言ってくるわけ。でも息子のお願いはむげにできない。だからお金をあげちゃうわけ。本当は嫌でした。

――引き離しを止められなかったんですか?


 翌月の4月半ば、双方の親と私たちで、話し合いを持ったんです。私は、本心ではなかったけど、向こうの親に対して「やり直したい」と言いました。でも、彼のお母さんが承諾しなかった。ただ、毎日通わせることだけは、子どもの生活が大変だから、しばらくやめるということで話がつきました。

 それから少しの間、母子2人で過ごしました。というのも、話し合いの後、ゴールデンウィークの時期に夫が家を出ていったんです。「疲れたから実家に帰って静養したい」って言って。私からしたら「どうぞどうぞ」って感じ。その時期は、母子2人ですごく楽になりました。

 とはいっても、私は息子と2人で寝たりはしませんでした。その直前まではお父さんと一緒に寝ている子だったんだけど。「中学生だから1人で寝なさい」と言って、自分の部屋を与えました。

――でも、平穏は戻らなかった。

 そうです。裏で彼が自分の姉に相談して、着々と引き離し工作を進めていたんです。そして実際、ゴールデンウィークの前に、離婚調停の書面が来ていました。私は弁護士とか心理の専門家に相談しなきゃと思って、いろいろ調べました。そして、離婚と子どもの関係について詳しい大正大学の青木聡先生にたどり着きました。でも、すぐには先生本人に会えなくて、引き離しには間に合わなかった。息子は着の身着のまま、荷物は持たずに連れていかれました。


子どもを連れて、逃げました。