[連載]白央篤司の「食本書評」

料理がグッと気楽になる! 簡単・うまい・栄養◎、『70歳からのらくらく家ごはん』レシピがスゴイ

2020/05/12 18:00
白央篤司

「魚の缶詰でごちそうポテトサラダ」をアレンジ

イワシのかば焼き缶と青ネギでアレンジ

 写真は、たまたま家にあったイワシのかば焼き缶とたっぷりの青ネギを混ぜてアレンジしてみたもの。うん、これもおいしいぞ。サラダチキンでやってもいいだろうな。

 さて、みなさんは親御さんが現在どんな食生活をしているか、ご存じだろうか。年をとるとだんだんと硬いものがつらくなり、のみこむ力も弱くなる。知識としては知っていても、実際自分の親が今どうなのかは確認しにくいもの。また「老いを認める」というのも嫌なものだろうと思う。食べること、作ることに難しさを抱えていても、肉親には言いにくい……ということは多いのではないだろうか。

 本書内では、高齢の方々の食に関するリアルな悩みも紹介される。若い頃では考えられないようなことが、できなくなる。体や歯が丈夫なうちは、どういうものが「食べにくい」「噛みにくい」のか想像もつかない。あらかじめ知っておけば、対応ができる。以前より小さく切ってみる、以前より10分長く煮てみる、というアドバイスは些細なようでいて、経験のある人だからこそできることだ。

 「昔のようにせん切りがきれいにできなくなってしまい、自信を失った」(大意)という悩みには胸をつかれた。日々料理することで自身の老いを如実に突きつけられるというのは、どれほどしんどいことだろう。それぞれの悩みに対して中村さんは常に「がんばりすぎないで」「完璧にこなそうとしすぎないで」とエールを送る。その視線が実に、あたたかい。

 「自粛」期間が続き、帰省がはばかられる日々が続く。70代半ばに近づくうちの親はしっかり食べてくれているだろうか。この本を送ってみようと思う。


白央篤司(はくおう・あつし)
フードライター。郷土料理やローカルフードを取材しつつ、 料理に苦手意識を持っている人やがんばりすぎる人に向けて、 より気軽に身近に楽しめるレシピや料理法を紹介。著書に 自炊力にっぽんのおにぎりジャパめしなど。

最終更新:2020/05/12 18:00
70歳からのらくらく家ごはん
そうなの、簡単がいいけど作った実感もほしいの