サイゾーウーマン芸能韓流『パラサイト』半地下のにおいと屈辱 芸能 [連載]崔盛旭の『映画で学ぶ、韓国近現代史』 韓国映画『パラサイト 半地下の家族』のキーワード「におい」――半地下居住経験者が明かす“屈辱感”の源 2020/01/17 19:00 崔盛旭 崔盛旭の『映画で学ぶ、韓国近現代史』 (C)2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED 近年、K-POPや映画・ドラマを通じて韓国カルチャーの認知度は高まっている。しかし作品の根底にある国民性・価値観の理解にまでは至っていないのではないだろうか。このコラムでは韓国映画を通じて韓国近現代史を振り返り、社会として抱える問題、日本へのまなざし、価値観の変化を学んでみたい。 昨年のカンヌ国際映画祭でのパルム・ドール受賞をはじめ、今年のアカデミー賞で作品賞、監督賞など6部門にノミネートされるなど、世界中で快進撃を続けるポン・ジュノ監督の『パラサイト 半地下の家族』(以下『パラサイト』)が、いよいよ日本でも公開された。前回のコラムでは、監督の過去作『グエムル―漢江の怪物―』を取り上げ、彼の出自からつながる「反権力的なまなざし」について紹介したが、今回はいよいよ最新作である『パラサイト』を見ながら、この映画に描かれている「韓国」を考えていきたい。ただし本作は“ネタバレ厳禁”の箝口令が敷かれており、監督自身も観客へのメッセージで繰り返し注意を呼びかけているため、その点については本コラムでも“マナー”を守るよう努力したいと思う。 ネタバレすることなく映画の鍵を伝えるには、何をどう語るべきだろうか悩んだ挙げ句に思いついたのが、ポン・ジュノ監督自らが提示した3つのキーワードを手がかりにする方法だ。韓国での公開を前に、監督はこの映画のキーワードは「階段」「におい」、そして「マナー」だと語っている。すでに映画を見た人なら納得しているであろう、これらのワードを掘り下げることで見えてくる「韓国社会」への理解を深めた上で、映画をより楽しんでもらいたい。 <物語> ソウルの半地下の部屋に暮らすキム一家は、全員が失業中。ある日、名門大学に通う友人の紹介で、長男のギウ(チェ・ウシク)が、IT企業のパク社長(イ・ソンギュン)の娘ダヘ(チョン・ジソ)の家庭教師になった。それを皮切りに、キム一家は次々とパク社長の家に「就職」することになる。ギウの妹ギジョン(パク・ソダム)は、社長の息子ダソン(チョン・ヒョンジュン)の美術教師に、母チュンスク(チャン・ヘジン)は家政婦に、父ギテク(ソン・ガンホ)は社長の運転手に。こうして、出会うはずのない社会の頂点と底辺に位置する家族が出会ったとき、事態は思わぬ方向へと転回していく。 次のページ 社会的身分の上昇と転落を象徴する「階段」 12345次のページ セブンネット 母なる証明(Blu?ray Disc) 関連記事 パルムドール受賞『パラサイト』を見る前に! ポン・ジュノ監督、反権力志向の現れた韓国映画『グエムル』を解説韓国映画『金子文子と朴烈』、“反日作品”が日本でロングランヒットとなった魅力とは?韓国映画『弁護人』、公開から6年後の今話題になる背景――「検察」という韓国社会の“怒り”の対象韓国映画『共犯者たち』の皮肉すぎる“その後”……主要メディアが政権に忖度したことで起こる「現実」とはなにか不況の韓国映画業界、トレンドは「低予算」「新人監督」「日韓合作」!?