サイゾーウーマン芸能韓流『パラサイト』半地下のにおいと屈辱 芸能 [連載]崔盛旭の『映画で学ぶ、韓国近現代史』 韓国映画『パラサイト 半地下の家族』のキーワード「におい」――半地下居住経験者が明かす“屈辱感”の源 2020/01/17 19:00 崔盛旭 崔盛旭の『映画で学ぶ、韓国近現代史』 社会的身分の上昇と転落を象徴する「階段」 (C)2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED では、最初のキーワードから見てみよう。「階段」について、ポン・ジュノ監督は次のように説明する。 「この映画には階段がたくさん出てくるので、スタッフみんなで“階段映画”と呼んでいた。それぞれ自分はどの階段が一番好きかを語り合う、階段コンテストなるものも開いたりしたんだ。階段といえば、やはりキム・ギヨン監督の『下女』(1960)からは多大な影響を受けているよ」 監督の言葉通り、この映画は階段だらけだ。大事な場面では必ずと言っていいほど、階段が登場する。ここで着目したいのは『下女』から影響を受けたということだろう。“韓国映画界の怪物”と呼ばれたキム・ギヨン監督の代表作『下女』は、下女(家政婦)によって脅かされ、破滅していく家族を描き、当時大きなセンセーションを巻き起こした。下女役の女優が「悪女」とバッシングされるほど観客たちにショックと恐怖を与えたこの映画において、大きな役割を果たすのがまさに「階段」である。 昔から映画に登場する階段は、しばしば身分の「上昇」と「転落」を象徴するものとして使われてきた。『下女』で、家のど真ん中に置かれた階段も同様だ。主人を誘惑し妊娠することで、「奥様」の地位を奪う欲望を抱いた下女が階段を上がっていく場面や、その欲望が達成できずに階段から転がり落ちて死に至る場面において、舞台となる階段は映画の主役そのものであった。とりわけ、足の不自由な娘の部屋が階段の上にある不自然な設定ゆえ、足を引きずりながら階段を行き来する娘を観客に何度も見せることで、必然的に階段の存在を強く意識させる。その上でキム・ギヨン監督は、人間の欲望、社会的身分の上昇と転落の物語を、階段を舞台に展開していくのだ。 『パラサイト』での階段は、同じソウルとは思えない格差のある二つの空間をつないでいる。ギテクたちは、階段のはるか上の世界で見た夢が泡のように消える瞬間、果てしなく長い階段を下りなければならず、ついには最悪な現実を目の当たりにすることになる。まさしく階段は、「上昇」したギテク一家を現実に突き落とす「転落」の装置であるといえるのだ。ポン監督の言葉通り、この映画には多くの階段が登場するので、それぞれがいかに物語と関わっているかに注目するのもおもしろいかもしれない。 次のページ 他者からの指摘が屈辱となる「におい」 前のページ12345次のページ セブンネット 母なる証明(Blu?ray Disc) 関連記事 パルムドール受賞『パラサイト』を見る前に! ポン・ジュノ監督、反権力志向の現れた韓国映画『グエムル』を解説韓国映画『金子文子と朴烈』、“反日作品”が日本でロングランヒットとなった魅力とは?韓国映画『弁護人』、公開から6年後の今話題になる背景――「検察」という韓国社会の“怒り”の対象韓国映画『共犯者たち』の皮肉すぎる“その後”……主要メディアが政権に忖度したことで起こる「現実」とはなにか不況の韓国映画業界、トレンドは「低予算」「新人監督」「日韓合作」!?