仁科友里の「女のための有名人深読み週報」

山崎ケイの「ちょうどいいブス」キャラは、人をトリコにする? 炎上の背景に見えてくるモノ

2019/03/07 21:00
仁科友里
相席スタート公式プロフィールより

 羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな有名人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます

<今回の有名人>
「出会いよ、出会い」相席スタート・山崎ケイ
(三菱地所CM「新しい匂いのする街」シリーズ「丸の内の健康意識篇」)

 芸人がネタ番組以外でテレビに出るには、キャラが要る。このキャラは、その芸人の真の姿である必要はなく、周囲とかぶらず、かつインパクトがあればよい。そういったセオリーに則ったであろうオンナ芸人、相席スタート・山崎ケイの「ちょうどいいブス」は、炎上騒ぎを2回経験している。炎上は珍しくないが、2回となると「ちょうどいいブス」が、誰かの神経を逆なでする、もしくは“トリコにする何か”を持っていると考えていいのではないだろうか。

 「男性はブスが嫌い」と巷間思われているが、一部の男性に“かわいげ”を感じさせるという意味で言うのなら、「ちょうどいいブス」は最強である。美人に失礼なことを言えば、嫌われてしまう。職場で女性に「おまえはブスだ」と言えば、ハラスメントになって問題になりかねない。しかし、女性側が「ちょうどいいブス」を自称するのなら、「ブスと言ってもいい」「下に見てもいい」「かつ、怒らない」という三原則が揃う。上から物を言いたい男性にとって、「ちょうどいいブス」は、ある意味キュートな存在だろう。

 最初の「ちょうどいいブス」炎上は、花王のヘアケア製品「エッセンシャル」のPR動画だった。山崎が同社の製品を使うと、「ちょうどいいブス」から「いいオンナ」になるというものだったが、批判が殺到。同社は謝罪するとともに、動画を削除した。制作側は、「山崎が“ちょうどいいブス”と自称しているのだから、女性蔑視ではない」と思ったのだろうが、たとえ自称であっても、顧客に夢を与える空間で、そのメイン層の女性を侮蔑する言葉を平気で使う見識の低さが炎上の原因なのではないか。


 2回目の炎上は、読売テレビが山崎の著書『ちょうどいいブスのススメ』(主婦の友社)をドラマ化すると発表した時だった。同署はモテ指南本なので、読売テレビ側は「ちょうどいいブスが、美人よりモテるなんて夢があって、ドラマにふさわしい」と考えたのだろう。一方の視聴者側は「男性に査定されて、モテることが幸せという時代ではない」と大炎上。とうとう、ドラマのタイトルが変更されることになった。ドラマの脚本は山崎が書いたものではないし、山崎のように“何としてでも男にモテたい”という価値観はあってもいいと思うが、山崎自身にもバッシングの火の粉が飛んだ。