仁科友里の「女のための有名人深読み週報」

「地元の友達に負けたくない」横澤夏子が憧れる、“キラキラした東京生活”の大いなる盲点

2019/02/28 21:00
仁科友里
横澤夏子オフィシャルブログより

 羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな有名人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます

<今回の有名人>
「東京を味わえる、一番キラキラした区に住みたい」横澤夏子
『中居くん決めて!』(TBS系、2月25日)

 タレントがテレビで不動産を見せる、探すというのは、結構ナーバスな部分を含んでいる。どんな不動産を持っているか、もしくは借りたいかを話すことで、自分の財布事情がモロバレするからだ。特に賃貸物件の場合、家賃は給料の1/3程度に抑えるべきという“言い伝え”がある。となると、賃貸物件の値段がバレるのは、月収、ひいては年収もバレるということだ。

 格差が広がり、リア充を嫌うこのご時世、テレビで不動産を見せる、探すタレントは限られている。「自宅や別荘の内部を見せるのはタレント・IKKO」「高級物件を狙って探すのは日本のインスタ女王である渡辺直美」といった具合に、キャラの立ったタレントしか思い浮かばない。化粧品ビジネスで一発当てたIKKOと、今や世界的セレブになりつつある直美なら、「視聴者も『高級物件がふさわしい』と納得するだろう」と制作側が思っているのではないだろうか。

 こういう流れの中、『中居くん決めて!』(TBS系)で、久しぶりに上記の2人以外で不動産を探す芸能人を見た。芸人・横澤夏子である。21歳の頃から婚活パーティーに行くなどして婚活に励み、2017年に念願の結婚を果たした。相手は一般人男性で、利便性を考え、現在は都心の駅から近いマンションに住んでいるが、手狭なために引っ越しをしたいという。それなら、いっそ賃貸ではなく、購入した方がいいのかを、番組MC・中居正広に決めてもらいたいそうだ。


 横澤の条件は、港区、中央区、千代田区という「東京を味わえる、一番キラキラした区」。賃貸であれば、「駅から徒歩5分以内、3階以上、家賃14万程度」の物件を探しているという。このエリアに住んだことのある人なら、即「無理だよ」と答えるだろうが、恐らく、わざと無知な設定にしているのではないだろうかと思う。上述した通り、家賃は年収を連想させる。横澤が的確な条件を掲げると、「それぐらい稼いでいますよ」と言っているようなものなので、彼女にとってはマイナスだろう。また、横澤は芸風として“キラキラした女性に憧れるキャラ”で売っているので、実際の収入は別として、テレビ上では「住みたいけど、住めない」ポジションでなければならない。

 番組は格安物件から、億ションまで紹介するが、横澤が気に入ってかつ経済的に手の届く範囲の物件はなかった。同番組のゲストであるサンドウィッチマン・伊達みきおや富澤たけしは、「賃貸で様子を見て、家族が増えたら購入を考えれば」と勧めたが、中居は「賃貸にお金を払うのがストレスになっているのであれば、物件に出会ったら、即購入する」ことを勧めた。

 横澤は、この番組に出演することで、キラキラに憧れるキャラを演じることができた。オリンピック後に地価や物件の値段は下がるかもしれないということは、前から言われており、今後、横澤のように家を探す新婚さんは増えるかもしれない。となると、横澤に今後、物件探しの仕事が来ることも考えられるので、この出演はビジネスとしてプラスだろう。しかし、もし横澤が、港区、千代田区、中央区を「東京を味わえる、一番キラキラした区」だと思って、キャラやビジネスではなく本気で定住したいと考えているのだとするのなら、結構しんどいのではないだろうか。