ドラマレビュー

斎藤工『MASKMEN』で考える、山田孝之らイケメン俳優が抱える“痛さ”の使い方

2018/02/19 21:00

痛さを自覚している「正しさ」

 芸人としてダメ出しをくらう姿や、笑いが取れずに真剣に悩んでいる姿は面白いものの、当初期待していたイケメン俳優・斎藤が抱えているジレンマは、今のところ見えてこない。

 だからイマイチ盛り上がらない。

 もともと、斎藤はキャリアの長い俳優で、イケメン俳優として注目されたのも30代に入ってからと遅咲きだった。だから、イケメンとしての自分を過度に否定することの痛々しさもわかっているのだろう。マスコミでの彼の振る舞いはとてもスマートで、大人の余裕を感じる。そういったスタンスは人間としては圧倒的に正しい。

 しかし、その「正しさ」のせいで、本来ならいくらでも面白くなるはずのドラマにブレーキをかけているように見える。年々、不気味さが増している山田と比べるのは酷かもしれないが、このドラマ自体が「ただのイケメン俳優ではないとアピールするために文化人を気取ってしまう自分自身の痛さについて、僕は自覚的ですよ」というポーズに見えてしまうのだ。

 タイトルの『MASKMEN』とは、覆面芸人という意味だけでなく、仮面をかぶっているような斎藤の態度も含まれるのだろう。だとすれば、物語はそんな斎藤の仮面を剥いで、本当の内面を暴き出す方向へと向かうのだろうが、そもそも斎藤の中に暴いて面白い内面があるように見えないのだ。おそらく、斎藤に必要なことは自嘲的になることではなく、イケメンという仮面を徹底的に磨きあげることではないだろうか。


 実際『BG』に出ている斎藤は、大人の俳優として枯れたがっている木村の隣にいることもあってか、かつて木村が持っていた色気がにじみ出ており、このドラマ自体が木村から斎藤へのイケメン俳優の王位継承の儀式に見える。

 せっかく目の前に椅子が差し出されているのだから、まずはちゃんと座ってほしい。おそらくポスト木村に一番近いのは斎藤工なのだから、変な言い訳はしないでいいのだ。
(成馬零一)

最終更新:2018/02/19 21:00
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