佐々木俊尚氏×白河桃子氏対談(後編)

独身でも子持ちでも生きやすい社会とは? 佐々木俊尚×白河桃子が語る、「変わりゆく暮らし」の選択肢

2017/04/01 15:00

期待はしないけど、いざとなったら頼りになる関係が必要

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そして、暮らしは共同体になる。』(アノニマ・スタジオ)

――続いて、子どもを持つかどうかですが、本能的に欲しい場合と、やや打算的に将来の孤独感解消や介護を期待している場合があると思うのですが、それについてはいかがでしょうか?

白河 介護要員とは思いませんが、私は子どもがいないので、母の病院へ付き添っていく際に、「将来、自分の時はどうしよう」と心配にはなります。でも、そのために子どもを作るのは違うと思います。介護してほしいとかリスク軽減だけじゃなくて、女性はただ子どもが欲しいんですよね。そう思う人が産みやすい環境を整えることが大事になるんじゃないでしょうか。

佐々木 将来、介護要員にされる子どもも、たまったもんじゃないですよね。子どもに過剰な期待を抱くのは、もう無理ですよ。今の20代ぐらいの若者の親って、50代だと思うんですが、そうすると、豊かな人はもうほとんどいないというのが現実です。親も子どもも貧しいのが当たり前、どちらも期待できないという状況になってきている。その状況の中で、介護要員として子どもを持つという発想自体が生まれにくいと思うんです。福祉制度を家族に負わせるのは間違いで、介護は公共の福祉の問題です。

白河 それこそ、シェアハウスで子どもが育てられないのって、安心感がないと子どもって産めないからだと思うんですよね。なんとかなるっていう感覚がないと、女性は思い切って子どもを産まない。いろいろなことがうまくいっていると感じた瞬間、女性は出産という一番大事なことをするんだと思うんです。

 前に面白いシェアハウスで暮らしている人に「そのうちハウスの中で、子どもが産まれたりして」と言ったら、「可能性はある。全員で育てるかもしれない」と言っていました。シェアハウスが安心できる場所になり得ると思います。みんなで子育てして、そこで初めて、子どもを媒介にして、もっと強固なつながりができるのかもしれない。やっぱり自立した大人だけのつながりは、もろいところがあるけれど、どうしても面倒見なきゃいけない人がいると、結びつきがより強くなる。皆がしっかり立っているだけというのは、ちょっと違うと思っています。


そして、暮らしは共同体になる。