映画『毎日がアルツハイマー ザ・ファイナル』関口祐加監督インタビュー

認知症介護の終末に「幸せな死=ハッピーエンディング」はあるのか?

2017/02/01 15:00
OLYMPUS DIGITAL CAMERA
関口祐加監督

 認知症の母親との日々をユーモラスに綴ったドキュメンタリー映画『毎日がアルツハイマー』(以下、『毎アル』)の関口祐加監督は、続く『毎アル』第2弾である『毎日がアルツハイマー2 関口監督、イギリスへ行く編』で、イギリスの認知症ケア施設の「パーソン・センタード・ケア」を取材し、認知症ケアの究極の形を見せてくれました。そして、今、関口監督は『毎アル』シリーズの最終章『毎日がアルツハイマー ザ・ファイナル』を製作中。お母さんとの日々とともに、日本だけでなく、オーストラリア、オランダ、イギリス、スイスでも撮影を行った最新作。この新作のお話と認知症ケアの在り方などについて、関口監督に伺いました。

■介護の終末、「看取り」「死」が最新作のテーマ

――『毎日がアルツハイマー』シリーズの3作目を製作中とのことですが、今回のテーマは「看取り」だそうですね。これは以前から考えられていたことなのでしょうか?

関口祐加監督(以下、関口) まったく予想もしていませんでした。『毎アル』1作目で、認知症の母をオープンに見せるドキュメンタリーを作り、2作目はそんな母の認知症ケアをどうすればいいのかを考える映画にしようと、イギリスの「パーソン・センタード・ケア」を実践している施設を見学に行きました。ここはまさに認知症ケアの究極の形であり、自分でも『毎アル3』は、これを突き詰めて描いていくことになるのではないかと思っていました。

 でも『毎アル2』から3年の間、いろいろなドラマが起こったんですよ。まず、母が虚血症の発作で4回倒れました。虚血症の発作は突然に意識不明になり倒れるんです。特に3回目に倒れたとき、私がそばにいたので母を支えることができましたが、母が独居だったら頭を打って死に至ったかもしれない。母の認知症が進むにつれ、母の命を預かるのは介護をしている私なんだと改めて思い、介護の終末を考えるようになったのです。


――認知症ケアの先の「介護の終末」、これが看取りにつながっているのですね。

関口 母が4回目に倒れたときに初めてカメラを回しました。発作がどういう状況で起こり、ある程度どうなるかがわかっていたので撮影できたんだと思います。それと私自身、2年前に両股関節全置換の手術をしまして、地獄のリハビリを経て歩けるようになりました。ですが、骨は年々劣化していくので、いつかは車椅子になるかもしれない。自分の体も老いていく中、介護の先にあるものは何かと考え始めたのです。また入院中に病院で知り合い、親しくしくなった女性が亡くなったり、オーストラリア人の友人の女性から膀胱がんであることを打ち明けられたり、この3年間で「死」について考えさせられる出来事が続いたのです。

――「死」についてはあまり考えたくないというか、それと向き合うのは難しいと感じますが、監督はいかがでしたか?

関口 死について考えるのは難しいことかもしれませんが、誰でも必ず死にますよね。どんなに偉い人でも、お金持ちでも、貧乏人でも、誰にでも「死」は平等に訪れる。最近は、尊厳死、平穏死などいろいろ言われているし、脚本家の橋田壽賀子さんも安楽死について語っているのを聞くにつけ、ここで死についてオープンに考えてみようと思いました。自分でも『毎アル』最新作のテーマが「死」になるなんて想像もしていませんでしたよ。でも、よしと決めたら、扉がどんどん開いていき、わくわくしながら扉の向こうに行くと、今まで知らなかったことに驚いたり、素敵な人に出会ったりして、本当に素晴らしい旅路になったと思います。

 その旅の果てにたどり着いたのが「死にハッピーエンディングはあるのか」ということで、これが最新作のテーマです。


ボケたっていいじゃない