『なんかおもしろいマンガ』あります ~女子マンガ月報~【9月】後編

永遠と幻を信じること――少女アイドルの内面を掘り下げた作品『5つ数えれば君の夢』

2014/09/18 21:00

女子マンガ研究家の小田真琴です。太洋社の「コミック発売予定一覧」によりますと、たとえば2014年8月には1006点ものマンガが刊行されています。その中から一般読者が「なんかおもしろいマンガ」を探し当てるのは至難のワザ。この記事があなたの「なんかおもしろいマンガ」探しの一助になれば幸いであります。後編は単行本。8月のオススメと9月の注目作をご紹介します。

【前編はこちら】

【8月のオススメ】

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(左)『薄幸日和』全1巻(小学館)、(右)『5つ数えれば君の夢』全1巻(秋田書店)

 マンガには、なんだって盛り込むことができます。感動したり、笑ったりする以外にも、歴史を学んだり、おいしいお店やレシピを教えてもらったり……。グレゴリ青山先生の『薄幸日和』全1巻(小学館)は、幸福論であり、京都案内であり、映画や本のガイドでもあるという、世にもおトクな総合マンガです。

 東京から京都へと転校してきた高校1年生の小暮夕子は、派手な容姿ゆえに男子からは注目され、女子からは妬まれて、いずれにせよ厄介事に巻き込まれやすい存在でした。案の定、新しい学校でもいじめに遭いますが、そんな彼女の前に現れたのは「薄幸」を愛する同級生、薄井幸子でした。「薄幸」を巡る2人の奇妙な京都巡りが始まります。


 笑える小ネタをふんだんに盛り込みつつ、水上勉『五番町夕霧楼』(新潮社)を拠りどころとした京都案内は読み応え満点。「薄幸っていうのはね夕子さん、不幸の中に“薄”く存在する“幸”のことなんです~」なんていう言葉にはっとさせられながら、あっという間に楽しく読める1冊です。

 今日マチ子先生の『5つ数えれば君の夢』全1巻(秋田書店)は、なんとも切なくて美しいマンガです。主人公は人気アイドルグループの5人。優しく、丁寧に掘り下げられた彼女たちの内面に、思わず胸がギュッとなります。永遠ではないものを永遠と信じること、幻を現実だと思い込むこと。

 高野苺先生の『orange』3(双葉社)には連載再開後のお話が収録されています。徐々に明らかになる未来からの手紙の謎と翔の運命。続きが気になって仕方ありません。

『都の昼寝物語 1 (フラワーコミックスアルファ)』