「元極妻」芳子姐さんのつぶやき160

みずほ銀行、元ヤクザの口座開設を拒否――元極妻がツッコミたいポイントは?

2023/06/18 17:00
待田芳子(作家)
水戸簡易裁判所の画像
写真ACより

今は亡き某指定組織の三次団体幹部の妻だった、待田芳子姐さんが語る極妻の暮らし、ヤクザの実態――。

元ヤクザ、「総合的判断」で銀行口座開設できず

 「暴力団」を離脱して5年以上たっているのに、口座開設を拒否された元組員さんが「精神的苦痛を受けた」として、みずほ銀行に対して10万円の損害賠償請求訴訟を起こしていたことが報道されましたね。

 報道によると、原告の元組員さんは2017年5月1日に「県警の支援」で「指定暴力団」を離脱、現在は建設関連の会社で働いているそうです。今年の4月に「みずほ銀行水戸支店」で口座開設を申し込んだら、「総合的判断」の末に開設はできないといわれたとか。

 いろいろツッコミどころはあるんですが、まずはいわゆる「5年条項」ですね。ほとんどの自治体の暴力団排除条例には、組織を離脱してから5年は暴力団員とみなす、という「5年条項」(「みなし暴力団員」ともいいます)の規定があります。

 例えば、今回の茨城県の暴力団排除条例では、条例が適用される「暴力団員等」の定義を「暴力団員及び暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者をいう」としています。文言はどこもだいたい同じですね。


 企業も「5年条項」はまず入れてます。みずほ銀行の場合は「反社会的勢力の排除に係る規定」として、「お客さまが、暴力団、暴力団員、暴力団員でなくなった時から5年を経過しない者、暴力団準構成員、暴力団関係企業、総会屋等、社会運動等標ぼうゴロまたは特殊知能暴力集団等、その他これらに準ずる者(以下これらを「暴力団員等」という。)に該当し、また次の各号のいずれかに該当したことが判明した場合」としています。

 今どき「総会屋」や「社会運動標榜ゴロ」とかいたら見てみたいもんですが、これらは法務省が使っている表現で、いわゆる「19年指針」(犯罪対策閣僚会議幹事会申合せ「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針について」平成19年6月19日)に書かれていて、いろんなところで登場します。

 ちなみに前から謎なんですが、東京都の暴排条例には、この「5年条項」がありません。東京でヤクザしてると脱退後5年でもダメということなのでしょうか?

 そもそも離脱してから5年をどう生きるのかも大変なのに、5年がたってもダメ……とは意味がわからないです。

「5年条項」は、あくまで目安?

 原告の元組員さんは県警の支援を受けて離脱しているのに、ダメというのも謎ですね。元組員さんは、「(元暴力団員という過去)自らの意思によって克服することのできない属性」で、口座開設拒否は「就労の機会を奪い、社会復帰を阻害する不合理な差別」と主張しています。


 ひどい話なんですが、ありがちといえばありがちなんですよね。「5年条項」はあくまでも目安でしかないようです。雇う側としては「5年たったからといって、すぐに信用できるわけがない」ということですね。

 例えば、司法書士や行政書士の試験にパスして開業されている「元・山口組」の甲村柳市先生も、離脱されてから15年以上たっているのに、クルマのディーラーが契約を断ってきたそうです。

 ディーラーの名前を公表してもいいレベルだと思います。先生は、ニュースサイト「ビジネスジャーナル」への特別寄稿の中で「更生できない者たちは、死ぬまで罪を重ね続けるだろう。次の被害者は、今この記事を読んでいるあなたや、その家族かもしれない」と書かれています。ほんとその通りです。甲村先生はご本を出されるそうで、楽しみですねー。

更生を「民暴弁護士」が支援

 冒頭の訴訟の話に戻りますが、個人的には、代理人弁護士さんがいわゆる「民暴弁護士」さんというところも気になりました。ていうか茨城県の民暴委員会(茨城県弁護士会民事介入暴力対策委員会)が支援してるんですね。

 「ミンボー」というと、暴力団を排除する側のイメージしかないのは私だけでしょうか。最近は「暴力団排除」もビジネスとしてもうかるといううわさです。社内に「コンプライアンス委員会」を置く会社も多く、弁護士さんが顧問やアドバイザーに就任しています。この顧問料だけでも結構いくようです。あくまでうわさですけどね。

 今回の訴訟の代理人弁護士さんは、「暴力団排除」で茨城県から表彰されていて、単に排除するのではなく、「その後」も支援されているということなんでしょうか?

 この弁護士さんは、「毎日新聞」の取材に対して「口座開設を拒否されたことを理由に、元組員が金融機関を相手取り訴訟を起こしたケースは全国で初めてではないか」とコメントしています。

 請求額は10万円と「お金が目当てじゃない」アピールもあって、この裁判をきっかけにこうした支援が進むといいですね。

 一方のみずほ銀行広報室は、「事実関係や当社の主張は裁判で明らかにする」とコメントしていますから、どんな主張をされるのか、楽しみです。みずほ銀行といえば一時期続いてたシステム障害の改善について、社長さんが「東京新聞」のインタビューに対し、半笑いのような顔&タメ口で答えたことが話題になったのも思い出しました。

待田芳子(作家)

待田芳子(作家)

今は亡き某指定組織の三次団体幹部の妻。夫とは死別。本名・出身地もろもろ非公開。自他共に認める癒やし系。著書に『極姐2.0 旦那の真珠は痛いだけ』(徳間書店)がある。

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最終更新:2023/06/18 17:00
みずほ銀行側の言い分が楽しみ