【連載】堀江宏樹に聞く! 日本の“アウト”皇室史!!

天皇家は贅沢嫌い? 1年で購入したスーツは2着だけ…昭和天皇の質素なお金の使い方

2023/04/22 17:00
堀江宏樹(作家・歴史エッセイスト)

佳子さまの「10億円御殿」は反抗の表れ?

――眞子さまや佳子さまがティアラを数千万円ほどでお作りになられたといいますが、公費である宮廷費から作ったものなので、結婚した後は持っていけないというお話でしたよね。

堀江 愛子さまはティアラの新調をなさらないままですが、ティアラは維持・管理するだけでもそれなりの費用が発生する宝飾品ではないでしょうか。結婚で皇室を離れた方のティアラをリフォームして活用なさるのも、「伝統を受け継いでいる者」という良いアピールになる気がします。

「権利があるからといって、贅沢はしない」という価値観は、戦後だけでなく、きわめて裕福だった戦前の天皇家にもすでに強く見られました。明治42年(1909年)、当時30歳だった皇太子殿下(後の大正天皇)のために、立派な東宮御所が建築されたのですが(現在の迎賓館赤坂離宮)、完成した建物を見た明治天皇による「こんな立派なのはもったいない」との発言もあって、大正天皇は紀州藩が江戸時代に使っていた古い建物で暮らし続けたそうです。

 昭和天皇は、新婚後のお住まいとされた霞ヶ関離宮が、関東大震災で倒壊したため、この豪華な東宮御所にて短期間暮らしたそうですが、お気に召さなかったようです。昭和天皇は「赤坂離宮はぜい沢だし、暖房の石炭は随分とかかるし(略)そんないやな所にいって国民に贅沢してるといふ感を与へることは困る」とおっしゃったそうです(田島道治『拝謁記』岩波書店)。

――広くて光熱費がかかるし、国民に嫌われてしまう贅沢さで溢れている、というわけですね。

堀江 尊い身分で、しかも大富豪であるにもかかわらず、ご自身が贅沢することに消極的な日本の天皇家のあり方は、他国の王族・皇族とはかなり違うような気がします。

――他の王族たちとは異なり、贅沢を好まない日本の皇室の姿勢もあって、東宮御所は海外からの賓客をもてなす迎賓館になったのですね……。それにしても、秋篠宮家の佳子さまが、リノベーションだけで40億円以上かかったという新御殿には移らず、10億円かけて建てた仮の御殿でご家族と離れ、お住まいになるというニュースが最近、話題になりました。

堀江 佳子さまの一人暮らしは、秋篠宮家への“反抗”という側面も否定できないでしょう。ご真意は測りかねますが、国民へのアピールだと思います。10億円の邸宅に一人暮らしというのも凄まじい贅沢だという声があるのはわかりますが、やはり皇族の皆様が“日本の顔”であることを考えると、そして住まいがその人の顔を作りあげることを考えると、何もかも、庶民っぽくなってしまわれることのほうが弊害のように感じます。

――3回にわたって、皇室の方々のお金の使い方の特徴や、経済感覚について考えてきましたが、質素倹約主義のようでいて、庶民には考えられないような巨額を費やし、何かをなさったり……やはり分析が追いつかないほどのミステリアスな存在であると感じました。

堀江 それこそが皇室のカリスマの源なのでしょうね。

堀江宏樹(作家・歴史エッセイスト)

堀江宏樹(作家・歴史エッセイスト)

1977年、大阪府生まれ。作家・歴史エッセイスト。早稲田大学第一文学部フランス文学科卒業。日本・世界を問わず歴史のおもしろさを拾い上げる作風で幅広いファン層をもつ。著書に『偉人の年収』(イースト・プレス)、『眠れなくなるほど怖い世界史』(三笠書房)など。最新刊は『隠されていた不都合な世界史』(三笠書房)。

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最終更新:2023/04/22 17:00
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