『ザ・ノンフィクション』レビュー

『ザ・ノンフィクション』利用料月5,000円の赤字フリースクールと補助金問題「そこにいていいんだよ ~もじゃくん夫婦と不登校の子どもたち~」

2022/11/08 12:20
石徹白未亜(ライター)
『ザ・ノンフィクション』利用料月5,000円の赤字フリースクールと補助金問題「そこにいていいんだよ ~もじゃくん夫婦と不登校の子どもたち~」
写真ACより

 日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。11月6日の放送は「そこにいていいんだよ ~もじゃくん夫婦と不登校の子どもたち~」。

『ザ・ノンフィクション』あらすじ

 神奈川県・横浜市にある、不登校の子どもたちが通うフリースクール「学べる居場所・かけはし」(以下、かけはし)を運営する、元小学校教師・廣瀬貴樹と妻の千尋。貴樹はくせ毛で、「もじゃくん」と呼ばれている。

 かけはしは特定の場所を持たず、廃校になった小学校や行政の施設など日によってさまざまな場所で活動を行っている。2021年5月から活動が始まり、当初は1人の子どもしか通っていない状況だったが、徐々に教師時代の仲間に伝わり、地域の情報紙などにも掲載され、今では毎日20人が通っている。

 かけはしに通う8歳の少年・だいちゃんは、音や刺激に過敏なようで、学校に行けず、家でも幼い弟妹たちの存在にストレスを感じてしまうようだ。また母親にべったりで、近所のコンビニに母親が行くのも嫌がるとのこと。千尋に、“かけはしのスタッフや友達の中で、だいちゃんが遊んで楽しいと思える人ができたらいいかもしれない”と励まされた母親は、ほっとした様子だった。かけはしは子どもの居場所だけではなく、親がほっとできる場所でもある。

 そんなかけはしだが、行政からの金銭的支援などは受けていない状況で、子どもたちの利用料金1人当たり月5,000円と、賛同者の寄付で賄っている。ボランティアスタッフの交通費や子どもたちの保険代を払うと、それだけで運営は火の車だ。そのため、貴樹と千尋の教師時代の貯金を取り崩す生活だという。


 そんな中で貴樹は、近隣の古い空き家を借り、かけはしの拠点にしようと試みるも、フリースクールは住宅街ではなく公的な施設で行ったほうがいいと周囲から助言され、結局、その空き家は地域の人々が集まるカフェとして運営することに。貴樹はカフェで稼いだお金がかけはしの運営費用になればともくろむも、むしろカフェは赤字続きで、かえって経営状況を圧迫してしまう。

 番組の取材開始当初13歳だったかけはしに通う少年・たくみは、「理由なき不登校」のようだ。彼は8歳になるまでは明るい性格だったのだが、徐々に口数が少なくなっていき、小学4年になるとまったく学校に行けなくなってしまった。不登校の理由は、いじめでも病気でもなく、母親もいまだに原因がわからないと話す。その後、いくつかのフリースクールに通わせるも、続いたものはかけはしだけだったという。

 たくみは取材開始時、人とのやりとりはうなずくだけで発話がない状態だったが、貴樹の誘いには素直について行っていた。そして、次に番組スタッフがかけはしを訪ねると、たくみは千尋や、番組スタッフとも短い会話ができるように。

 たくみが所属する中学校の教師は、彼のそんな様子を見た上で、かけはしのようなフリースクールに通うことについて「(家にいるより)よっぽどいい、人と触れ合っている。家の中の刺激は限られてますから。(フリースクールでは)ぜんぜん違う刺激を受けられますよね」と話していた。

 また、母親にいつもべったりだっただいちゃんも、番組の最後では母親から離れ、貴樹でも千尋でもない別のかけはしのスタッフと遊んでいたのだった。


 子どもたちは変化を遂げる中、横浜市・山中竹春市長がかけはしを視察する機会があり、貴樹は運営の厳しさなどを伝えたものの、公的な支援を得られるといった成果にはつながらなかったようだ。

今、子どもの不登校で悩んでいるあなたへ