コラム
私は元闇金おばさん

ゴミ屋敷の2階は水槽だらけ、異形の魚が悠々と泳ぎ――闇金社員が怖くなった“初現場”

2022/11/05 16:00
るり子(ライター)

 現場の住所を書いたメモを片手に熱帯魚屋に行き、生体の買取が可能か店主に尋ねると、「モノによっては」と回答されました。どんな魚を売りたいのか問われて答えに窮してしまいましたが、現場で見たのと同じような魚が展示されていたので、水槽を指さして説明します。

「アロワナとプレコ、それにポリプテルスですね。状態によっては引き取れるので、あとでうかがってもよろしいですか」

 現場まで見に来てくれるというので、メモを見ながら住所を伝えると、訝し気な表情を浮かべた店主が言いました。

「あれ? ここって、花輪(仮名)さんのお宅じゃないですか?」
「え、ええ……」
「花輪さん、どうされたんですか? この前、来ていただいたばかりだけど、なにも言ってなかったですよ。あなたは、娘さん?」
「いえ、取引先の者です。ちょっと事情があって、急に引っ越すことになったモノですから、ご協力いただけたらと……」

 熱心に育てていたのにと、ブツブツ言いながらも来訪を承諾してくれたので、携帯電話の番号を交換してから近くのスーパーに立ち寄ります。弁当や飲み物を多めに買いつけて現場に戻ると、すでに熱帯魚屋の店主が到着しており、2階の水族館部屋で買い取りの交渉が始まっていました。

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