『ザ・ノンフィクション』レビュー

『ザ・ノンフィクション』聞く耳を持たない父の息子は……「話を聞いてくれる人 ~空っぽの僕が生きる意味~」

2022/09/12 18:40
石徹白未亜(ライター)
写真ACより

 日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。9月11日の放送は「話を聞いてくれる人 ~空っぽの僕が生きる意味~」。

あらすじ

 名古屋駅前で夜、2017年から「聞き屋」として、人の話を無償で聞いているディーン・カワウソこと水野怜恩。雨の日以外は聞き屋としての活動を続けており、2021年は300日以上名古屋駅前にいたという。

 聞き屋の客層は10~70代と多様だ。話を聞いてほしい人が相席状態になることも多く、客同士で話が盛り上がることもある。

 聞き屋の常連もいる。28歳のいおりは精神的な病を抱えており、ハイ状態になると買い物を止められなくなってしまう。食べるものにも事欠くこともあり、水野は別の客からもらったペットボトルのミルクティーをいおりに渡していた。

 水野自身は実家暮らしで、アルバイトを週一でしているものの生活を賄えるほどではなく、会社員時代の貯金を切り崩している。残高が100万円を切りそうになっている通帳も映されていた。


 水野は大学卒業後、大手パンメーカーに勤めるも、転勤辞令が出され退職。その後、旅先の横浜で別の聞き屋に出会い、地元名古屋で自身も聞き屋をしてみたところ、初めて人生でやりがいを感じたという。今後は占い師としての活動を模索しているようで、人気占い師の元を訪ねる様子も伝えられていた。

 水野の両親は息子の将来を心配していて、特に父親は息子に対し口うるさいところもあったようだ。母親はそんな夫(水野にしてみれば父親)に不満があるようで、「すごく(息子に対し)口出しするんですよ」「私も息子と同じ気持ちありますし」「そういう流れがあって『もういい』『口も聞きたくない』って」と番組スタッフに話していたが、その最中に父親が「もういい」と母親を制するシーンも映されていた。

 番組の最後で、常連のいおりは世話になっているお礼にと水野の名刺を作って手渡す。水野の聞き屋としての客は5,000人を超えたと伝えられていた。

『ザ・ノンフィクション』家族の話を聞かない父

 水野の父親は番組スタッフへの対応は丁寧だったが、「外面はいいものの、家族の話は聞かない」ように見え、また、母親は口数の多いマシンガントークタイプに見えた。

 水野の父親は家族に対し“聞く耳を持たないタイプ”にも見受けられたが、ただ、年代が上になるとこういった傾向のある男性は珍しくないようにも思う。


 そんな、話を聞かない父親の息子が聞き屋になる。「親の期待に応える」「親に反発し、別の道を行く」にしろ、やはり子どもの進路にとって、親の影響というのは大きいと思った。

名古屋で見かける聞き屋の謎