【連載】堀江宏樹に聞く! 日本の“アウト”皇室史!!

天皇家の医学書は体位マニュアル「四十八手」の先祖? 難解で高尚なエロスの世界

2022/09/24 17:00
堀江宏樹(作家・歴史エッセイスト)
写真AC

「皇族はスーパースター」と語る歴史エッセイストの堀江宏樹さんに、歴史に眠る破天荒な「皇族」エピソードを教えてもらいます!

――これまで「天皇家秘伝のセックスマニュアル」ともいえる秘密の医学書『医心方』のうち、「ベッドルームでの知識」ともいえる「房内」について歴史エッセイストの堀江さんに語っていただいています。

堀江宏樹氏(以下、堀江) 今回は『医心方』「房内」が後世に与えた影響をお話しましょうか。江戸時代に作られた体位マニュアル「四十八手」のことは、多くの読者がご存知だと思います。その四十八手の先祖にあたる体位マニュアルが『医心方』にもあるのでした。

 ちなみに江戸時代の「四十八手」って実は48で終わりなのではなく、96もあるのってご存知でした?

――めちゃくちゃ多いですね(笑)。


堀江 「四十八手」は「表」と「裏」の2巻構成になっているので、「48」じゃなくて「96」というね。延宝7年(1679年)に浮世絵師・菱川師宣が『恋のむつごと四十八手』という艶本の絵を担当しているのですが、同年、同版元から「四十八手」のフレーズを含む本がほかにも出ています。

 世の中で『恋のむつごと~』が「四十八手」の元祖という説があるのはわかりますが、それが元祖とは言い切れないかもしれません。もちろんこの頃に誕生したアイデアであることは間違いないのですが。

 一方、そういう発想の”先祖”にあたる『医心方』には、「九法(『玄女経』)」、そしてそれが継承・発展され、体位の数も増えた「三十法(「洞玄子」)」の2つが紹介されているだけです。時代が下るに連れ、体位の種類が増加していったことは興味深いですね。

――日本人はどんどんエッチになっていっているのでしょうか……。

堀江 なんともいえません(笑)。


 まず『医心方』の「玄女の九法」として最初に紹介されているのが「龍翻(りゅうはん)」の体位。これは「女を仰向けに寝かし、男がその上に伏し(以下略)」ということなので、現代日本語の「正常位」に相当です。この体位ですると「下等な娼婦と変わらない性の喜びを女は得る(=女則煩悦 其楽如倡)」なんてことまで書いてあります(笑)。

――本当に天皇家の方々に見せてもよい医学書だったのかって思いますよね、『医心方』。

堀江 淑女にも娼婦のような部分があるよ、ということなのでしょうか……。2番目に紹介されている体位は、その名も「虎歩」。

 「女をうつむきに寝かせて、お尻を高く、首を低くさせます。男はその背後にひざまずき、女の腹を抱え(以下略)」……これは現代日本語の「バック」に相当でしょうね。男性が40回ほど腰を降ると、「女陰開帳 精液外溢」してしまいます。

偉人の年収/堀江宏樹