サイゾーウーマン芸能韓流韓国映画『キングメーカー』に見る選挙と社会の分断 芸能 [連載]崔盛旭の『映画で学ぶ、韓国近現代史』 韓国、“政治的な扇動”が問題に……『キングメーカー 大統領を作った男』に見る選挙と社会の分断 2022/08/12 19:00 崔盛旭(チェ・ソンウク) 崔盛旭の『映画で学ぶ、韓国近現代史』 『キングメーカー』の主役キム・デジュン元大統領と「実質的な主人公」 (C)2021 MegaboxJoongAng PLUS M & SEE AT FILM CO.,LTD. ALL RIGHTS RESERVED. 本作の主役は「キム・ウンボム」と「ソ・チャンデ」という2人の男である。先述したように実在の人物の名前ではないが、キム・ウンボムはキム・デジュン元大統領をモデルにしている。 映画の冒頭で描かれるように、1961年、江原道の北部にある麟蹄郡(インジェグン)の補欠選挙で、キム・デジュンは初めて当選し、国会議員として政界に足を踏み入れた。そして彼は、パク・チョンヒから全斗煥(チョン・ドファン)、盧泰愚(ノ・テウ)まで30年余り続いていく軍事独裁政権と命をかけて闘い、民主化の実現に多大な貢献をする。 日韓の外交問題にまで飛び火した「金大中拉致事件」(73年)、大統領になって積極的に推し進めた「日本大衆文化開放政策」(98年)、初の南北首脳会談(2000年)の実現などに関わったこともあり、キム・デジュンは日本でも非常によく知られている大統領だが、1971年の大統領選でパク・チョンヒに肉薄した後、実際に大統領になる97年まで26年もかかっていることを考えると、苦労の絶えない政治家人生を送ってきたと言えよう。 そしてもう一人の主役「ソ・チャンデ」こそ、本作の実質的な主人公である「キングメーカー」だ。モデルになったのは嚴昌録(オム・チャンロク)という実在の人物で、キム・デジュンのブレーンとして、それまで「アカ」のレッテルを貼られ、ネガティブキャンペーンの犠牲となって落選が続いていた彼を初当選させ、政治家としての土台を作ったとされている。 当時、ずる賢い人を指す「狐」を用いて「選挙の狐」と呼ばれたオム・チャンロクは、選挙では奇抜でずば抜けた戦略を打ち出したと同時に、対抗するパク・チョンヒも真っ青になるほど汚い手段もちゅうちょなく利用した。そんな活躍をしたにもかかわらず、政治の表舞台に出ることなく、資料もろくに残っていないオム・チャンロクに光を当てたことが、この映画のすぐれた点だろう。 次のページ 『キングメーカー』でコミカルに描かれた、キム・デジュン陣営の姑息な作戦 前のページ1234567次のページ 楽天 【輸入盤】1st Mini Album: O!RUL8,2? 関連記事 Netflix『梨泰院クラス』理解を深める3つの知識! 「梨泰院・財閥・クラス」の社会的背景とは?是枝裕和監督『ベイビー・ブローカー』、鑑賞前に知りたい韓国「ベイビーボックス」の実態「同性愛は治療で治る」韓国・ユン大統領秘書の発言が炎上! 映画『私の少女』が描く「LGBTと社会」の現在地Netflix『未成年裁判』は“ほぼ実話”? モチーフになった事件と、ドラマで描かれなかった「犯行動機」のうわさ映画『野球少女』で描かれた、韓国初の女性野球選手はいま――物語とは決定的に異なる「悲しい」結末