老いゆく親と、どう向き合う?

片付けで見つけた義父の遺言書に絶句――“執行人”の名前に「これどういうこと?」

2022/07/31 18:00
坂口鈴香(ライター)


“「ヨロヨロ」と生き、「ドタリ」と倒れ、誰かの世話になって生き続ける”
――『百まで生きる覚悟』春日キスヨ(光文社)

 そんな「ヨロヨロ・ドタリ」期を迎えた老親と、家族はどう向き合っていくのか考えるシリーズ。

 真山昌代さん(仮名・57)の義父母はそれぞれ違う老人ホームに入っている。当初は同じホームにいたのだが、認知症の義父が義母にひどい暴力を振るうようになったため、義母を別のホームに移したのだ。義父と離れた義母は、認知症の症状もすっかり落ち着き、趣味を楽しみながら生活するようになった。

 真山さんは、テレビとベッドしかない義父の部屋と、たくさんの趣味のものに囲まれている義母の部屋を比べながら、義父の人生って何なのだろうと考えるようになった。というのも、義父母のマンションが大規模修繕をすることになり、真山さんと娘が仕事を休んでは義父母のマンションに通っているからなのだ。

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これ、どういうことだと思う?

 大変なのは、都合をつけて義父母のマンションに行くこと、新幹線で帰るので交通費がバカにならないこと。それでも行ってしまえば、あとは工事業者が来たときに立ち会うくらいで特にすることもない。

 真山さんと娘は、この機会に義父母のマンションの室内を少し片づけることにした。

「いざという時、何がどこにあるかわからないのも困るので、部屋の中を確認しながら片づけていたんです」

 すると、いかにも元教師で几帳面な義父らしく、義父がまとめていたさまざまな書類が見つかった。

「お金や家の契約書、親戚など連絡先などちゃんとまとめてあったのは、さすが義父だと感心しました。これだけまとめてあれば、義父母が亡くなってもとりあえず混乱することはないでしょう」


 ところが――。娘が義父母の家に行っていたときのことだ。娘から真山さんにLINEで連絡が来た。

「遺言書があるというんです。いろんな書類がまとめてあったので、まあ遺言書まで作成しているのも当然というか、そう驚きませんでした」

 遺言書が手書きだったので、これが正式に遺言書として認められるのかは疑問だとしながらも、真山さんは娘に「あったんだね。おじいちゃんらしいね」と返事をした。

「でも、娘が私に言いたかったのはそのことだけではなかったんです。遺言書の写真が送られてきました。封はしてあるので、遺言の内容はわからないんですが、遺言の執行人として義姉が指名してあるのがわかりました。娘もそこに疑問を持ったようです。『お母さん、これどういうことだと思う?』と」

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