“噂の女”神林広恵の女性週刊誌ぶった斬り!【第600回】

性暴力、女性蔑視発言がなくならない“男社会”の問題を掘り下げ続ける「週刊女性」

2022/05/10 21:00
神林広恵(ライター)

“エライ人”による差別発言が量産され続ける理由

 そんな「週刊女性」だが、もうひとつ性加害にも関連する特集が。それが“エライ人による女性蔑視”問題だ。政治家の女性蔑視発言は数多いが、なぜ差別発言は量産され続けてきたのか、その解決法はあるのかを女性蔑視発言にも詳しい弁護士の太田啓子氏が解説してくれている。エライぞ、「週女」。

 太田氏によれば、男性による差別発言は、ひとつにホモソーシャルによるものだという。

「“冗談”含め女性を貶めるようなやり方で、男同士の連帯を強める。そのあり方を『ホモソーシャル』というのですが、これは本当に厄介です」
「男性同士のかばい合いもありますよね。“女癖は悪くても有能なやつだから”と、セクハラを問題にするどころか“あいつはモテるんだ”と肯定的に語ったり、“あんな有能な人がセクハラごときで”と被害を矮小化したり」

 そうそう! キモいかばい合い! しかも、それは社会に歴然とある“男社会”や“そのなかでの特権”という差別にさえ気づかず、加担していることにも無自覚だからだという。だが、この特集でもうひとつ興味深かったのが、こうした差別発言は男性からだけでなく、時に女性からもあることだ。太田氏は「LGBTは生産性がない」との差別発言を行った杉田水脈衆議院議員を例に、こう考察している。

「圧倒的な男社会の中で少数派の女性が認められるために、男性たちの本音をなぞるかのような振る舞いを極端に強調することで、生き残ろうとする女性たちもいるのでしょう」


 太田氏は、これを“少数派が陥ってしまう罠”だと指摘するが、確かにそうかも。性暴力についても“被害者に落ち度があるのでは”という卑劣な批判が、男性だけでなく女性からも出てくることがあるが、それも男社会の論理や価値観に長い間さらされた結果とも思えるし。

 性暴力、差別、女性蔑視発言と、さまざまなことを考えさせられた今週の「週女」。ほかにも中森明菜の実兄直撃や、「人間ドキュメント」の美川憲一、大坂なおみの母・環さんのインタビューなど興味深い記事が多く、多様性を考える上でも必読だ。

おすぎとピーコのこの映画を見なきゃダメ