[再掲]ドラマ俳優クロニクル

反町隆史、『相棒』を卒業! ドラマ評論家が読み解く、学園ドラマ『GTO』で不動になった俳優イメージ

2022/03/23 21:30
成馬零一

援助交際、イジメ、キレる若者……『GTO』が描いたシリアスな90年代のテーマ

 脚本は、後に『女王の教室』や『家政婦のミタ』(いずれも日本テレビ系)を手掛ける遊川和彦が担当。遊川は80年代後半からテレビドラマを執筆する脚本家で、『オヨビでない奴!』や『予備校ブギ』(いずれもTBS系)といったコメディテイストのドラマを得意とする脚本家だった。しかし、90年代に入るとバブル崩壊以降の殺伐とした日本の世相に呼応する形で作風も変化。『真昼の月』(同)や『魔女の条件』(同)といったシリアスなドラマを手掛けるようになっていく。

 この『GTO』も、モチーフはとてもシリアスで重たいものだ。登場する高校生たちには90年代に問題になっていた援助交際(少女売春)を行う女子高生や、一見、真面目な優等生に見えるが影で陰湿なイジメに加担する生徒が登場。ナイフを持って暴れる生徒は“キレる若者”のイメージを反映させており、彼らと大人は「どう向き合うべきか?」というテーマが打ち出されていた。

 また、『GTO』は遊川が手掛けた数少ない原作モノのドラマだが、80年代のコメディ作家としての遊川と、90年代以降のハードな作風の遊川の2つの要素が混ざっていることが、今見ると興味深い。『女王の教室』で展開された、普通の人々の中に1人だけ物理法則を無視した漫画のキャラクターのような存在がいて、トリックスターとして周囲を翻弄するという作劇手法を、遊川が初めて自覚的に用いたのである。