サイゾーウーマンカルチャーブックレビュー『新しい出会いなんて期待できない~』『小説の惑星』 カルチャー 【サイジョの本棚・打ち合わせ編】 新年、新しいエンタメに出会いたい人への2冊『新しい出会いなんて期待できない~』『小説の惑星』 2022/01/16 18:00 保田夏子 サイジョの本棚 伊坂幸太郎が選ぶ、珠玉の短編集 保田 もうひとつお勧めしたい本は、新たな作家を発見したい人や、単に「新しい小説を読みたい」という人に向けた、伊坂幸太郎氏による短編集アンソロジー『小説の惑星 ノーザンブルーベリー篇/オーシャンラズベリー篇』です。 A子 伊坂さんといえば、『ゴールデンスランバー』『グラスホッパー』『重力ピエロ』など映画化された作品も数多い、押しも押されもせぬ現代日本の人気作家のひとりですね。 保田 収録された作品には、絲山明子さん(「恋愛雑用論」)や宮部みゆきさん(「サボテンの花」)、町田康さん(「工夫の減さん」)ら現代の日本文学を引っ張る作家から、中島敦(「悟浄歎異」)や井伏鱒二(「休憩時間」)、芥川龍之介(「杜子春」)など教科書に掲載されているような作家まで、古今の名作がそろっています。 A子 今回念頭に置かれたのは読書家ではなく、どちらかというと、あまり好きな小説が見つけられない人に向けた作品集ということで、読後感の良い作品を多めに扱っているという点も魅力的ですね。 保田 伊坂氏が「『小説を見限るのはこれを読んでからにして!』と渡したい、そう思える本」とまで言い切る作品群だけあって、人間の抱えるおかしみをさりげなく伝える作品や展開に引き込まれるミステリーなど、どれも短い中にギュッと濃い世界観が詰まっています。アンソロジーって、長編ではなかなか手に取りにくい未知の作家の作品に触れられるのも魅力だと思っているので、ぜひ2022年に、新たな“推し作家”を見つけてほしいです! 次のページ 今回紹介した2冊 前のページ123次のページ 関連記事 シスターフッドに支えられながら道を切り開いた女性を描く、『らんたん』『マリメッコの救世主』話題のエッセー『常識のない喫茶店』と、『スカートのアンソロジー』に通底するハラスメントにNOを突き付けるための姿勢女性の幸せは「不当」なの?/愛情は素晴らしいが、すがって生きるものではない/差別心は「親しみ」の裏返し【サイ女の本棚】ドラマ『アンという名の少女』副読本にオススメ! 斎藤美奈子『挑発する少女小説』氷室冴子『いっぱしの女』誰も信用できない不安と、家族から受ける屈辱――認知症患者の日常を追体験できる村井理子『全員悪人』の悲しさ