サイゾーウーマンカルチャーブックレビュー『新しい出会いなんて期待できない~』『小説の惑星』 カルチャー 【サイジョの本棚・打ち合わせ編】 新年、新しいエンタメに出会いたい人への2冊『新しい出会いなんて期待できない~』『小説の惑星』 2022/01/16 18:00 保田夏子 サイジョの本棚 (C)サイゾーウーマン ここはサイゾーウーマン編集部の一角。ライター保田と編集部員A子が、ブックレビューで取り上げる本について雑談中。いま気になるタイトルは? ◎ブックライター・保田 アラサーのライター。書評「サイジョの本棚」担当 で、一度本屋に入ったら数時間は出てこない。海外文学からマンガまで読む雑食派。とはいっても、「女性の生き方」にまつわる本がどうしても気になるお年頃。趣味(アイドルオタク)にも本気。 ◎編集部・A子 2人の子どもを持つアラフォー。出産前は本屋に足しげく通っていたのに、いまは食洗器・ロボット掃除機・電気圧力鍋を使っても本屋に行く暇がない。気になる本をネットでポチるだけの日々。読書時間が区切りやすい、短編集ばかりに手を出してしまっているのが悩み。 保田 1月は年も改まって、新しいことを始めたくなる時期ですよね。 A子 とはいっても再びコロナ感染も広がる中、できることは限られていますよね……。 保田 今月は、こんな時期でもお勧めできる「新たな世界の扉を開く」本を紹介したいと思います。まずは、対談(+エッセイ)集『新しい出会いなんて期待できないんだから、誰かの恋観てリハビリするしかない』。私は年末年始の間にこの本を読んで、新ジャンルに開眼したんです! A子 エッセイ集『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』(幻冬舎)などで知られるコラムニストのジェーン・スーさんと、音楽ジャーナリスト高橋芳朗さんによる、ラブコメ洋画に特化した対談なんですね。 保田 私は、そもそも恋愛映画に苦手意識があったんです。恋愛が成立することがすべてのような世界観に共感できなかったり、同性同士の足の引っ張り合いの描写にイライラしちゃったりして……。その流れで恋愛要素の強いコメディーも避けていたんですが、そんなジャンル自体への根深い偏見を取り払うような勢いを持った本でした。 A子 どのジャンルにも面白い作品/面白くない作品はありますから、ジャンルごと食わず嫌いしてしまうのはもったいないですよね。 保田 そうなんです。2人のラブコメ愛あるトークによって、恋愛至上主義だけに陥らない作品、現代の価値観に沿ってアップデートされている作品や、今見ても色褪せない名作がピックアップされているので、ジャンルに詳しくない人でも、自分に合う未知の作品を見つけることができると思います。 A子 ラブコメ映画だからこそ、観客を笑わせながらも女性の日常生活に立ちはだかるジェンダーやルッキズムの構造を浮き彫りにすることもできたりするんですよね。ラブコメ初心者にとってはもちろん、この2人ならではの劇中の音楽や社会背景からの考察もあって、もともと映画好きな人でも楽しめそう。 保田 私みたいな「恋愛映画? パスパス!」というタイプにとっては、視界を広げてくれるような1冊だと思います。私はこの本をきっかけに、ルッキズムに苦しめられた女性が自分らしくいられる道を探した『キューティ・ブロンド』や、生粋のNY育ちであるアジア系女性レイチェルと、嫁姑問題で苦労したレイチェルの恋人の母の“「『仁義』ある女たちの闘い」(本書より)を描いた『クレイジー・リッチ!』を鑑賞して楽しみましたし、もっと早く出会いたかったなーと感じました。寒くて外に出たくない冬の間に、たくさんラブコメ映画を楽しみたいです! 次のページ 伊坂幸太郎が選ぶ、珠玉の短編集 123次のページ 関連記事 シスターフッドに支えられながら道を切り開いた女性を描く、『らんたん』『マリメッコの救世主』話題のエッセー『常識のない喫茶店』と、『スカートのアンソロジー』に通底するハラスメントにNOを突き付けるための姿勢女性の幸せは「不当」なの?/愛情は素晴らしいが、すがって生きるものではない/差別心は「親しみ」の裏返し【サイ女の本棚】ドラマ『アンという名の少女』副読本にオススメ! 斎藤美奈子『挑発する少女小説』氷室冴子『いっぱしの女』誰も信用できない不安と、家族から受ける屈辱――認知症患者の日常を追体験できる村井理子『全員悪人』の悲しさ