コラム
オンナ万引きGメン日誌
福袋に盗品詰め込んだ万引き老女、「お正月だから妹とおいしいものを食べたくて」警察官も呆れ
2022/01/08 16:00
店長が多忙なため、出勤のあいさつは電話で済ませるよう指示されていたので、初売りの福袋目当てに並ぶ人たちの列を眺めながら連絡を入れました。
「正月だから、高額品をメインに見てくれる? 酒1本とか、小さいのはいいから」
「お気持ちはわかりますけど……」
よほど忙しいのでしょう。高額もしくは大量の被害以外は、相手にしたくないと言われます。裏を返せば、少しならば盗まれてもかまわないと言っているに等しく、耳を疑う思いがしました。そのような姿勢こそが常習者をはびこらせ、商品ロスを蓄積させる要因になるのです。しかしながら、末端の保安員である私が、クライアントの意向に逆らえるわけもありません。
ひとこと言ってやりたい気持ちを堪えて、気持ちを落ち着かせるべく行列を見渡せる位置にある喫煙所で一服しながら開店を待っていると、色褪せたグリーンのブルゾンを着た70代と思しき老女が目に留まりました。
「ねえ、お兄さん。タバコ1本、あたしに恵んでくれない? ここの灰皿、水が張ってあるから、拾えないのよ」
おそらくは、ホームレスの人でしょうか。寒い中、足先の開いたサンダルを素足のまま履いているため、足全体が乾燥して粉を吹いたように白濁しています。1本のタバコを差し出して、吸っていた自分のタバコを消した男性は、関わりたくない様子で列に戻っていきました。
(この人と一緒に入ろう)