コラム
オンナ万引きGメン日誌
最先端AIの目は万引き犯を見つけられるのか? ベテランGメンとの対決の結果はいかに――
2021/10/23 16:00
カゴの中にある高級洋菓子や健康ドリンク、それに蜂蜜などといった商品を、売場に設置された小分け用のポリ袋に入れているのが気になったのです。
そのまま追尾すれば、店内で頒布されるチラシを数枚手にした女性は、それも駆使して手に取る商品を隠していきました。殺気溢れるような目で、カゴの中に何度も手を入れ、いわゆる精算偽装を済ませた女が、レジに寄ることなく店の外に出たところで声をかけます。
「こんにちは、お店の者です。カゴにある商品、ご精算していただけますか」
「ああ、はい」
「お声かけしちゃったので、事務所までお願いできますか」
「わかりました」
感情をみせることなく、無表情のまま同行に応じてくれていますが、受け答えのリズムがおかしく、どこか病的なものを感じました。いきなり体調が悪くなられても困るので、状況を探るべく、事務所までの道中に努めて優しく声をかけます。
「今日は、どうしたんですか?」
「私、病気なんだと思います」
「体調は、大丈夫ですか? 何かあったら言ってくださいね。お病気のことは、店長さんにもお伝えしますから」
骨の太さしか感じられないほど細い手足をみれば、病名を尋ねるまでもありません。カートを押しながら、なるべく目立たないように事務所まで誘導して、未精算の商品をデスク上に並べさせます。