高橋ユキ【悪女の履歴書】

ご近所の団地ママ友を惨殺……子ども会役員で知り合い「仲が良すぎて」恨みに変わった【福岡 レズビアン殺人事件:前編】

2021/08/27 17:00
高橋ユキ(傍聴人・フリーライター)

ただのママ友ではなく「同性愛じゃなかね」

「もうしょっちゅう、池田さんは紀子さんの家に上がり込んどったですね。我が家とおんなじだったですよ」
「ほんとにもうべったりだったですね。あの人たち、同性愛じゃなかね、とうわさが立つくらい」
「仲がよすぎて、憎さ百倍になったとじゃなかですか。ふつうの付き合いじゃなかったですもんねえ」

 ふたりがどちらかの家を訪ねると、すぐにバタバタと雨戸を閉めるといったことからも、うわさは信憑性を増して広まっていった。

 我々が生きる現代でこそLGBTQなど多様なセクシュアリティについて知られるようにはなったが、それに対する差別や好奇の目がゼロかといえば、いまだそうではない。であれば当時、ふたりを見る主婦たちのまなざしはどのようなものであっただろう。

 ふたりは団地に住む主婦たちにとって、うわさ話の格好の対象だった。また美里自身も、ママ友にふたりの関係を尋ねられ「女同士のほうが体の線がくずれなくていい」などと、肉体関係をほのめかすような発言をしていたといわれる。

――続きは8月28日公開


※レズビアン殺人との名称は、今日では差別意識を助長する表現ですが、1973年の時代背景と社会状況を伝えるため、当時の報道の文言を引用することとしました。

高橋ユキ(傍聴人・フリーライター)

高橋ユキ(傍聴人・フリーライター)

傍聴人・フリーライター。2005年に傍聴仲間と「霞っ子クラブ」を結成(現在は解散)。著作に『つけびの村 噂が5人を殺したのか?』(晶文社)『木嶋佳苗 危険な愛の奥義』(徳間書店)など。好きな食べ物は氷。

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最終更新:2021/08/27 17:05
つけびの村/高橋ユキ(フリーライ
狭い世界は人間関係が煮詰まっていくから