仁科友里「女のための有名人深読み週報」

太田光は「パワハラ」、有吉弘行は「いい先輩」? 対照的な“後輩指導”に学ぶ、年長者の「無難な選択」

2021/06/11 12:30
仁科友里(ライター)
太田光は「パワハラ」、有吉弘行は「いい先輩」? 対照的な後輩指導に学ぶ、年長者の「無難な選択」の画像1
『お願いランキング!』(テレビ朝日系)公式サイトより

羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな有名人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます。

<今回の有名人>
「パワハラだって思われるのは、まだその人の表現力が足りないんだよ」爆笑問題・太田光
『太田伯山ウイカの「はなつまみ」』(テレビ朝日系、6月2日深夜)

 人気バラエティ番組『「ロンドンハーツ』」(テレビ朝日系)で「後輩にちゃんと慕われている? 相思相愛ウラ取りグランプリ」というコーナーがあった。オアシズ・大久保佳代子やFUJIWARA・の藤本敏史ら中堅芸人は、本当に後輩からに好かれているのか確かめる企画だ。ここで明らかになったのは、先輩芸人から後輩芸人に対しての“気遣い”である。

 「芸人の世界は縦社会」だと言われることもあるが、この企画を見ると、先輩も後輩に結構気を使っている。大久保は「先輩面というか、恩着せがましい感じで接しない」と話していたし、藤本は「お笑いの話はあえてせず、おいしい店に連れて行く」と明かしていた。

 しかし、後輩たちは数多くいる先輩のうち、この2人を「一番いい先輩」に認定しなかった。藤本に関しては、お笑いの話をしないため、「学ぶことがない」という後輩の意見もあったし、彼がチョイスする名店の食事も、特にありがたいと感じていなかったようだ。対して「お世話になっている先輩」として最も名前が挙がったのは、有吉弘行。毒舌で知られるタレントだけに意外な気もするが、有吉は後輩の出演した番組をよく見ていて、褒めてくれるのだという。こうした意見を聞き、当の本人は「後輩の話を聞いて、ずっと笑っているだけ」と話していた。


 有吉のケースから考えると、

・仕事の話を聞いてくれて、ダメ出しや否定ではなく褒めてくれる人
・「いつも自分を気にかけている」と感じさせる人

 これが現代の「いい先輩像」といえるのではないだろうか。

 有吉自身、『進め!電波少年』(日本テレビ系)の出演を機に人気者になるも、すぐにブームは去り、ぱったり姿を見せなくなった。しかし、品川庄司・品川祐を「おしゃべりクソ野郎」と呼んだことが話題になり、芸能人にあだ名をつける芸で再ブレーク。今ではバラエティ番組で引っ張りだこの存在だ。ほかにも、「這い上がるにはADに気を使え」など、地獄を見た有吉だからこそ語れる話もあり、くすぶっている後輩芸人たちにとって、有吉以上の相談相手はいないように思う。

 しかし、有吉は単なる“いい人”ではない。『マツコ&有吉 かりそめ天国』(テレビ朝日系)で、ある時、若い世代のスタッフなどには「注意をしない」という話になり、共演のマツコ・デラックスは「嫌われたくない」「自分が損だから」と、その理由を語っていた。これはつまり、スタッフや芸人など、自分より目下の世代に正すべきところがあっても、彼らはあえてスルーしているのだろう。 


 またそれは一方で、「求められていないことは言わない主義」とも考えられるだろう。『ロンドンハーツ』を見る限り、後輩は先輩に「あれはダメだ」と言われたら、それが芸に対するダメ出しだとしても、自分の人格を否定されたように受け止める人が多かったように思う。だとすれば、有吉のように「ダメ出しはしない」のは賢明な判断なのかもしれない。

オレは絶対性格悪くない!