【連載】わが子から引き離された母たち

「これは連れ去りだ!!」不倫夫が警察官を連れて「息子を返せ」と激高! 子連れ別居した妻が「子どもと離れ離れ」になった理由

2021/06/05 16:00
西牟田靖

調停によって息子と離ればなれに

――夫は、何の調停を起こしたのでしょうか?

 そのときは離婚を争っていなくて、どちらが育てるかという監護権と面会交流をどうするかという話し合いをしました。その間に私と息子は実家を離れ、2人でアパートに住むようになりました。息子と妹が不仲だったし、私も働けるぐらいの元気さを取り戻したんです。実家に来て半年後のことです。物件は、パート勤めのシングルマザーでも入れるアパートで、息子の小学校の近くでした。接骨院の受付と、引越センターの梱包作業と、ハンバーガーチェーン店の3つの仕事を掛け持ちして育てました。

――子どもを夫に会わせていた? または、会いに行ったりしたのですか?

 そのうち、月1回のペースで夫に面会交流をさせるようになりました。子どもを新幹線に乗せて東京に送り出したり、逆に向こうが来たりもしました。そのときのやりとりは、お互い事務的でした。感情を込めずに、敬語でやっていましたから。彼は金銭的にきつかったと思いますよ。私は法テラスだったのでそんなにかかっていませんが、夫は弁護士を立てていました。おそらく100万円ぐらいはかかったんじゃないでしょうか。調停が行われる日は、仕事を休まなきゃいけないですし。

――調停は、どのように進んだのですか?


 親として自分がいかにふさわしいかを主張し合いました。夫の主張は理路整然としていました。「両親のサポートはあるし、家も近い。正社員として働いているので、収入的には問題ない。子どもが戻ってきたら、残業しなくても帰れるような部署に、会社に移してもらう」といった感じです。

 その点、私は主張が弱かった。実家で一緒に同居していればよかったのに、子どもと2人暮らしということがマイナスにとられました。パートを掛け持ちしてもカツカツだということ。息子は家で留守番できる子ではありましたけど、ずっとゲームばかりしていた。そのこともマイナスだと判断されました。なので、掛け持ちをやめ、息子が小学校に行っている間に働ける昼間の事務に転職しましたが、タイミングが遅くて反映されず、そのまま、結審してしまいました。

――夫は調停においても理詰めだったんでしょう。とすると、美樹さんが、わーっと激高してつかみかかったときや、類似の出来事の詳細を、それぞれ証拠として提出したんでしょうね。

 そうだと思います。

――調停が結審したのはいつですか?


 15年5月です。育てる親として夫がふさわしいという判断が下され、息子の引き渡しが命じられてしまい、私は突然ひとりになってしまいました。監護権の調停で、母親としてやってきたことを全然主張できなくて、家裁の判断に母親としての頑張りが加味されなかったと思うと、いまだにちょっと涙目です。

子どもを連れて、逃げました。