サイゾーウーマンカルチャー社会引きこもりの息子をシェアハウスへ カルチャー 居住支援の現場から【3】 「息子と一緒にいるのが苦痛だった」引きこもる子どもを“シェアハウス”へ――入居が変えた母親との関係 2021/05/09 18:00 坂口鈴香(ライター) 社会 写真ACより 若宮由里子さん(仮名・53)は、オンラインゲームに没頭し引きこもっていた息子、祐樹さん(仮名・29)に仕事を勧めた。真面目に仕事をしてホッとしたのもつかの間、すぐに辞め、再び心を閉ざしてしまう。ネット依存外来や心療内科などを受診しても、グレーの診断しか出ない。途方に暮れていたときに出会ったのが居住支援法人「LANS(ランズ=ライフ・アシスト・ネットワーク・サービス)」の浅井和幸さんだった。浅井さんは、毎月祐樹さんをドライブに連れ出して話をしてくれて、祐樹さんも心を開いていく。 ▼前回▼ 大学生の息子がゲーム依存症で引きこもり! 「ネット依存外来」に通院も打つ手なし……母が助けを求めた先は? 若宮由里子さん(仮名・53)は、実家から大学に通っていたはずの長男・祐樹さん(仮名・29)が大学にも通わずに、引きこもってオンラインゲームに没頭していたことを知っ...サイゾーウーマン2021.04.25 息子がシェアハウスに移る ドライブする関係が1年ほど続いたあと、浅井さんから「LANSでシェアハウスをつくるので、祐樹さんを連れて行ってもいいか」と提案された。 「もう私も祐樹と一緒にいるのが苦痛だったので、お願いしたいと返事をしました。祐樹も行くと言ったので、LANSのシェアハウスに移ったんです」 その後、祐樹さんはLANSから紹介された仕事に行っては、数カ月で辞めることを何度か繰り返した。浅井さんの「長い目で見てください」との言葉を信じて、若宮さんは待った。 「シェアハウスの家賃は祐樹が働いたお金で払っていましたが、仕事を何度も辞めて払えなくなっても、私が払う必要はないからと、支払いを待ってくれていました。その家賃も、光熱費も含んでいるのにこんなに安くていいの? と思うくらいの値段で、それさえ払えてないのにずっと待ってくださっていたんです」 とうとう、仕事を辞めて1年がたち、食料も底を尽きかけたころ、面接を受けたいくつかの会社のうち、自衛隊に合格したと浅井さんから連絡が来たのは2019年の終わりのことだった。若宮さんは喜んだ。安定した身分で、今度こそうまく行きそうな気がした。 入隊は20年3月。ところが、その日の健康診断でまさかの不合格となったのだ。 「たまたまその半月前に、突然咳が止まらなくなったんです。コロナがはやりはじめていた頃でした。喘息ではないかということで、吸入器を持っていたのですが、その吸入器を見られて、吸入器が必要な人は入隊できないと、その日に家に帰されてしまったんです」 若宮さんのショックも大きかったし、さすがの祐樹さんも何も手につかないくらい落ち込んでしまった。何もできないまま、半年ほどたったころ、若宮さんは友人から「仕事してくれる人を探している会社があるけど、行ってみない?」と声をかけられた。 次のページ はじめて入れてくれた食費 12次のページ セブンネット 「大人の引きこもり」を救え! 関連記事 大学生の息子がゲーム依存症で引きこもり! 「ネット依存外来」に通院も打つ手なし……母が助けを求めた先は?ずっと良い子だった優秀な息子が――「大量のゴミが散乱する真っ暗な部屋」で見た、信じられない光景コロナ禍で生活に困窮する人に、私たちは何ができるのか? 支援者が「『見ない』という選択肢もある」と話すワケ60歳で若年性認知症になった母――心中考えた父と娘、関わらない息子【老いてゆく親と向き合う】明るく聡明な母で尊敬していたが――「せん妄」で知った母の本心【老いゆく親と向き合う】