居住支援の現場から【2】

大学生の息子がゲーム依存症で引きこもり! 「ネット依存外来」に通院も打つ手なし……母が助けを求めた先は?

2021/04/25 18:00
坂口鈴香(ライター)
gettyimagesより

 若宮由里子さん(仮名・53)は、実家から大学に通っていたはずの長男・祐樹さん(仮名・29)が大学にも通わずに、引きこもってオンラインゲームに没頭していたことを知った。祐樹さんが3歳のときに離婚していたが、祐樹さんはずっと手のかからない“良い子”だっただけに、あまりの変貌ぶりに愕然とするしかなかった。

▼前回▼

ネット依存外来での診断は“グレー”

 悩んだ若宮さんは、ネット依存外来のある専門病院に祐樹さんを連れていくことにした。片道3時間かかるところにあるが、そんなことは言っていられなかった。

「祐樹も病院に行かないとは言わないんです。『オレは病気じゃないから、行けばわかる』と。それでいて『お母さんに運転させるのは心配だから、俺が運転するから』と。優しいんですよ。でも、そこ? って感じですよね」

 1日がかりで行った病院では、検査しても「ネット依存症」という診断は下りなかった。


「かといって、白でもない。あくまでもグレー、ボーダーラインなんです。筋力もあるし、血液検査をしても異常は出ない。逆に先生からは『そこまでオンラインゲームできるのはすごいね』と言われる始末でした」

 薬も出してもらったが、祐樹さんは「病気じゃないから」と飲もうとしなかった。

仕事に行くようになった、と喜んでいたが

 ネット依存外来には1年半ほど通った。2人でネット依存症についての講演会に行ったりもしたが、それでも状態は改善しなかった。

 ただ、この頃になると、祐樹さんは引きこもり状態からは脱しており、外に出ることができるようになっていた。そこで若宮さんが「学校に行かないのなら、働きなさい」と、知り合いの製造工場で働くことを勧めたところ、祐樹さんは仕事に行くようになったのだ。

「しかも、真面目に働いてくれる会社の評判も上々でした。祐樹がパソコンの知識があるので重宝されて、1年くらいたつと、良くやってくれるからと給料を上げてくれました。なのに、突然辞めてしまったんです」


 きっかけは、祐樹さんと一緒に暮らしていた若宮さんの母ミヨ子さん(仮名・78)が骨折して入院したことだった。

「母がいなくなったとたん、会社に行かなくなったんです。会社の人も説得しに来てくれましたが、人が変わったようになって会話もできなくなりました。そしてまたゲームに没頭するようになってしまいました」

スマホゲーム依存症