[再掲]インタビュー

「カルディにベビーカーで入れたら……」で論争勃発! 電車内利用も物議醸す“ベビーカー問題”とは?

2021/03/05 16:17
サイゾーウーマン編集部

混雑時のベビーカー利用者に「非常識」と怒るのではなく……

 ネット上では、よく公共交通機関でのベビーカー利用をめぐって論争が起こる。メディアの中には、炎上が激化しているように伝えるところもあるが、一方で松田氏は理解が進んでいると認識しているようだ。

「もともと、鉄道でのベビーカーの安全利用に関する取り組みは、『子育て応援とうきょう会議』という会議体が、10年ほど前にスタートさせました。当初は反応が悪く、うち(せたがや子育てネット)のホームページにも、『親と子どもを甘やかしている』といった声が寄せられることも多かったのですが、最近では、表立ってそのようなことを言う人は減ってきたような印象です。確実に電車内でのベビーカーの利用は増えていると思います」

 2014年には、国交省が、公共交通機関やエレベーターなどで、ベビーカーを利用しやすくするためのマーク「ベビーカーマーク」を制定し、「車内でベビーカーを折り畳まなくてもよい」と呼びかけた。その影響もあってか、「今では『ベビーカーは畳まなくていい』という風潮になってきた」という。

 しかし、こと「混雑時のベビーカー利用」に関しては、ネット上で苦情を目にする機会は少なくない。

「子ども連れで移動する人にとって、『満員電車にベビーカーで入っていく』って、なかなかできないことだと思うんです。なので、そういう人を見かけたら、『何を考えているんだ』『非常識』と怒るのではなく、『そこまでしなければいけない理由って何なのだろう?』などと、気にかけてあげるような空気が生まれたらいいなと感じます。積極的に声をかけてあげるべき、というわけではなく、『大丈夫だよ』『みんなで一緒に子どもを育てていこう』という空気をつくりたいんです」


 ネット上には、「車内が混み合っているときに、ベビーカーに何度も足を踏まれた」「ほかの乗客のスペースを奪うように、ベビーカーをグイグイ押し込んできた」など、「マナー違反」を厳しく指摘する声も多数上がっているが、「そういうとき、『もしかしたら子育てにしんどさを抱えているのではないか?』などと、周りが心配してあげるような空気があるといいなと思います」という。

「現代の、特に東京では、『周りに知り合いがいない』中で子育てをしている『アウェイ育児』の人がたくさんいます。まったく知らない大勢の乗客をかき分けて、ベビーカーで電車移動をしなければいけない状況にいる人に、優しく寄り添うような空間になってほしいですね」

 例えば、満員電車でのベビーカー利用者に対して、そのほかの乗客が「乗車時間帯の変更」を提案するにしても、「迷惑だから時間をずらせ」と怒るのと、「時間をずらすと、もう少し居心地よく移動できるかもしれないよ」と語りかけるのとでは、受け取り手の抱く印象はまったく異なるだろう。松田氏は混雑時のベビーカー利用問題をめぐる「対立」を煽るような風潮、またその際、「お父さんもおじいちゃんもおばあちゃんも子ども連れで移動するのに、なぜか『お母さんの問題』のように捉えられている点」も疑問だという。

「それから、電車内でのベビーカー利用のルールを決めようという話でもないんです。ルール化してしまうと、例えば、車いすとベビーカーどちらを優先させるべきかといった話になる。この『優先』という言葉が出てきた瞬間、『順位付け』や『評価』が必要となり、それでは誰かが肩身の狭い思いをすることになってしまいます。子連れの人だけに優しくしてほしいというわけではなく、いろいろな事情を抱えた人たちが、同じ空間にいる際、お互いにちょっとずつ配慮し合えるようになるといいよね、ということなんです」

 さらに、ベビーカー問題を「電車内だけのマナー問題」ではなく、もっと広い視点で考えていきたいと松田氏。「子連れで遠出しなければいけない状況そのものをなくすことはできないか」という観点から、「誰もが家から徒歩で通える保育園に入園できる仕組みをつくれないか」「子育中は『在宅勤務可能』という企業を増やせないか」「子どもの検診を近場で受けられるようにできないか」など、「子育て環境をどう変えていくかの問題」として捉えているという。


メルちゃん おせわだいすきベビーカー