『ザ・ノンフィクション』レビュー

『ザ・ノンフィクション』プロ野球に固執する野球少年の両親「母さん、もう一度 闘うよ ~高校中退…息子たちの再起~

2021/01/25 20:00
石徹白未亜(ライター)

親子ともども「野球しかない」という危うさ

 番組では、二人のほかにも甲子園強豪校に進学し、その後自衛隊に入隊するものの、野球への夢を諦めきれずに、BBCスカイホークスに入った先輩が出てくる。入団後に修練を続けたが、プロには行けず22歳で就職を選び「卒業」していく姿が放送された。

 成覇は大学で野球を続けるのだろうが、将来の夢はスポーツトレーナーとのことで、「プロ野球選手」になるのは無理だという見通しがあるのだろう。この二人の進路を、プロ野球を目指す恭平はどう見ていたのだろう。

 プロ野球において、1チームに所属できる選手は各球団70名まで(1、2軍の合計)。そのほかが「育成選手」枠になり、育成選手の人数は各球団でまちまちだが、10人にも満たない球団もある。30代で活躍を続けるスター選手も多く、簡単には空かない。すさまじく狭い門だ。

 プロ野球選手の「進路」を追った毎年恒例の番組がある。年末に放送される『プロ野球戦力外通告』(TBS系)だ。プロ野球選手の夢を叶えたものの、ケガや、芽が出なかったなどの事情で球団をクビになった選手たちが、再起の試験=トライアウトにかける様子を追ったものだ。そこには、20代前半の若い選手も出てくる。

 トライアウトによって「再びプロから声がかかった」ケースは稀で、「声がかからなかった」「独立リーグに入ることになった」「海外の球団に行くことになった」というケースが多い。「独立リーグ」「海外」へ進路がつながった人も、いずれは「プロへ」と、決まったように同じ抱負を語る。


 『ザ・ノンフィクション』では、独立リーグの年収は100万と伝えられ、確かにこれでは食べていけない。だからとプロを目指しても、なれるかなどわからないし、プロになったところで、その後どうなるかわからないのだ。

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