オンナ万引きGメン日誌

「メルカリちゃん」と呼ばれる“万引き商人”の実態! 化粧品やストッキング……計92点を盗んだオンナ

2020/12/12 16:00
澄江(保安員)

大量のストッキングを乱暴にわしづかむオンナ

 午後8時過ぎ。あれも怪しい、これも怪しいと、勤務時間いっぱいまで、まったく不審に思えないお客さんの追尾を指示する警備隊長から解放されてまもなく、人気のない衣料品売場をゆるりと巡回していると、大きなトートバッグを肩に下げた40代前半と思しき太めの女性が目に止まりました。たんぽぽの白鳥久美子さんを、悪役の女子プロレスラーにしたような雰囲気を持つ意地悪顔の女です。

 一見して、50枚以上はあるでしょうか。カートに載せられたカゴの中には、大量のストッキングが入れられていました。こんなに大量のストッキングを、一度に買う人は見たことがありません。そう不審に思い目を止めていると、カート下段にあった空のカゴと商品を満載した上段のカゴを載せかえた白鳥さんは、再度ストッキングに手を伸ばします。

(あんなにたくさん、どうするつもりなのかしら)

 商品のサイズを確認することなく、まるで豆まきをするときのような動きで商品を乱暴にわしづかんだ白鳥さんは、それらをカゴの中に投げ入れ、売場から離れると、次は化粧品売場で足を止めます。そこで人気ブランドの口紅やファンデーション、美白系の化粧水などを、値段などを確認することなく複数ずつカゴに入れて、何度も後方を振り返りながらエレベーターに乗り込みました。一緒に乗り込める雰囲気ではないので、老体に鞭を打って階段を駆け上がると、多目的トイレに入る白鳥さんの姿が見えました。おそらくは、ここで商品をトートバッグに詰め替えるのでしょう。商店内の多目的トイレが、万引きの現場で悪用されることは珍しくなく、アンジャッシュの渡部建さんのような使い方をする方もいれば、盗撮カメラを仕掛けたり、麻薬を使用する人まで存在するので、どの店も重点的に警戒しているのです。

 案の定、トートバッグをパンパンに膨らませて多目的トイレから出てきた白鳥さんは、そのままエレベーターに乗り込んで階下に降りていきました。念のため、放置された商品がないか多目的トイレの室内を確認してから、階段を駆け下ります。


「あの、お客様? きちんとお会計していただかないと」
「あ、はい。すみません」

 エレベーターから出て、そのまま外に出て行く白鳥さんに声をかけると、こちらが拍子抜けするほど素直に犯行を認めてくださり、事務所への同行にも応じてくれました。防災センターの応接室に白鳥さんを案内して身分を確認させてもらうと、彼女は39歳。この近くのアパートで独り暮らしをしているそうで、半年ほど前に失業してから職に就けていないと話しています。続けて、トートバッグに隠した商品を出させると、テーブルに乗り切らないほどのストッキングが出てきました。その数、83点。そのほかに、口紅とファンデーション、化粧水も3つずつ盗んでいるので、それらを合わせると92点の被害となりました。すでに警備隊長は帰宅されているため、内線で副店長を呼び出して、今後の判断を委ねます。

万引きGメンは見た!/伊東ゆう