“中学受験”に見る親と子の姿

中学受験で不合格の難関校に「合格したけど蹴った」と嘘! 母のプライドに振り回された娘が「あの人は病気」と語るワケ

2020/10/25 16:00
鳥居りんこ(受験カウンセラー、教育・子育てアドバイザー)

 “親子の受験”といわれる中学受験。思春期に差し掛かった子どもと親が二人三脚で挑む受験は、さまざまなすったもんだもあり、一筋縄ではいかないらしい。中学受験から見えてくる親子関係を、『偏差値30からの中学受験シリーズ』(学研)などの著書で知られ、長年中学受験を取材し続けてきた鳥居りんこ氏がつづる。

写真ACからの写真

 子育てにおいて、時に中学受験は危険なものになりやすい。それは、親の子育ての経験値が足りないことが原因の一つと言えるだろう。

 子どもが小学4年生から受験勉強をスタートしたとして、親の子育て経験はたった10年。特に長子の子育ては、親にとっても、やることなすこと全てが初めての経験になるので、手探り状態であるのは否めない。何をどうすることが正解で、誰の意見が正しいのかもわからないまま、それでも子育てをしていかなければいけない。現代における“孤育て”では、その状況はさらに過酷だ。
 
 勢い、親の中には「隣の子が受験するから」「公立中学は不安と聞いたから」「優秀な大学に入学するためには、私立中学が有利とメディアが言うので」という心もとない理由で……つまり、子育てにおける自分自身の核となるポリシーがないまま、中学受験に参戦してくる人が出るのだ。

 こういうタイプの人は子どもが思春期に入ると、高確率で、一気に子育ての迷路に迷い込むように感じる。

 絵美さん(仮名)も、子育てに混迷を極めている母親の一人だ。


 絵美さんは、一人娘の渚ちゃん(仮名)を、その庇護の元、大切に育ててきたものの、それがあまりに行きすぎたせいか、彼女の子育ては「渚のため」というスローガンのもと、全ての決定権は絵美さんにあったという。

 渚ちゃんは4年生で入塾したのだが、中学受験は絵美さんの強い希望。しかも、志望校はA学園一択。その理由は「絵美さんが入りたかった」というものだったそうだ。

 絵美さん自身は中学受験経験者ではない。彼女の親が「公立で十分」という方針だったからだが、なんでも、A学園に入った同級生と今の自分を比較し、「A学園にさえ行っていたならば、自分の人生は違っていた!」と強く思い込むようになったらしいのだ。

 一方の渚ちゃんは、母の希望を叶えようと必死に努力したが、A学園の受験は残念な結果に終わる。A学園は難関校、しかも人気校なので、倍率も高いのだ。

毒母育ちの私が家族のしがらみを棄てるまで