“中学受験”に見る親と子の姿

中学受験で不合格の難関校に「合格したけど蹴った」と嘘! 母のプライドに振り回された娘が「あの人は病気」と語るワケ

2020/10/25 16:00
鳥居りんこ(受験カウンセラー、教育・子育てアドバイザー)

母いわく「偏差値が低いバカが行く学校」に入学、その保護者会でついた嘘

 母の落胆ぶりをストレートに感じていたものの、渚ちゃんは心の中で第1志望にしていた、絵美さんから言わせれば「偏差値が低いバカが行く」S学院に入学した。

 入学後、S学院で初めての保護者会が開かれた翌日、渚ちゃんはクラスメイトたちにこう言われたらしい。

「すごいね? 渚ちゃんって、A学園を蹴って、ここに来たんだって?」
「A学園に受かったなんて、すごいよ!!」

 偏差値で言えば、A学園とS学院は15ポイント以上の開きがあるので、そもそも併願校にはなりにくく、ましてや合格辞退をすることが稀だという背景がある。そのため、渚ちゃんはクラスメイトから質問攻めにあったのであろう。

「『渚ちゃんのママに聞いたんだけど、渚ちゃんって優秀なのね~?』って、ウチのママが言ってたよ!」


 渚ちゃんは、絵美さんがクラスメイトの母親たちに嘘をついたのだとすぐに理解したが、はっきり否定することができず、そこで「A学園を蹴った」という“既成事実”が出来上がってしまったのだ。

 多分その時は、クラスメイトも本気でそう信じていたからこその発言だったのだろうが、問題は中間テスト以降に現れ出した。渚ちゃんは成績優秀者に入っていなかったのだ。

 その頃から、渚ちゃんはクラスメイトに「嘘つき呼ばわり」されているように感じるようになったという。渚ちゃんは、当時のことを次のように振り返る。

「最初に明るく『違う違う! ママの妄想! 私、バカだよ?』って否定できていればよかったのかもしれません……。でも、その時は、母のA学園への思いを叶えてあげられなかったってことが申し訳なくて、そっちのほうに頭が一杯になっちゃって」

毒母育ちの私が家族のしがらみを棄てるまで