サイゾーウーマンカルチャーインタビュー精神科医が“無気力”な毎日にアドバイス カルチャー インタビュー 相次ぐ「イベント中止」でファンから悲痛な声――精神科医が“無気力”な毎日にアドバイス 2020/03/19 16:30 木村好珠(精神科医・健康スポーツ医) インタビュー photoBさんによる写真ACからの写真 新型コロナウイルスの影響により、アーティストのコンサートやイベント、舞台公演等が続々と中止・延期になっている。これに関わる出演者やスタッフが大きな打撃を受けるだけでなく、ネット上には「コンサートがモチベーションなのに、中止になったら生きてる意味ないよ……」「週末に舞台があると思うと、キツい仕事も頑張れる。でもコロナのせいで中止になって、もうどうしたらいいかわからない」など、ファンの悲痛な叫びが続出している。 楽しみにしていたイベントが突然中止になり、まるで“抜け殻”のような無気力状態に陥ってしまったファンは今、どのように毎日を過ごしていけばよいのだろうか? 精神科医の木村好珠氏にアドバイスをいただいた。 ――新型コロナウイルスの影響で、「中止」になったイベントも多数あります。代えが利かないものを失った喪失感は、どのようにすれば乗り越えられますか? 木村好珠氏(以下、木村) 喪失感から抜け出すことは、その対象が自分の中で占める割合が大きければ大きいほど困難になってきます。どうしても行きたかったコンサート、観劇したかった舞台を忘れようと思っても、すぐに忘れられるものではありませんよね。ですので、無理に「忘れなきゃいけない」「気持ちを切り替えるべき」とは思わないでください。その対象や自分の感情としっかり向き合うのも、喪失感から抜け出すひとつの方法です。また、自分の中でその存在がどれだけ大きかったのかも、はっきりとわかるでしょう。そこまで大切なものに出会えたことを、ポジティブに捉えてみてください。 喪失感を覚えるほどのものに出会うことは、決して容易ではありません。その対象が今までの自分にどれだけ楽しさや喜びを与えてくれたか再認識して、「夢中になれるものと出会えてよかった!」と考えることも大事です。友人や家族、同じ趣味の仲間と、そうした気持ちを分かち合うのもいいでしょう。その際、ネガティブな発言をする人と一緒にいると“負の感情”が伝染しやすいので、自分の周りにいる、笑顔でポジティブな人と話してみてください。 その中で、何かやろうという気持ちが起これば、もともとの趣味以外にも挑戦してみましょう。今まで触れてこなかったジャンルの音楽を聞いたり、話題の映画を見ているうちに、新しい出会いがあるかもしれません。 また、心が沈んでいるときは、生活リズムも狂いがちです。適切な食事と睡眠ができなくなると、メンタルに大きな影響を及ぼします。普段から生活リズムが狂いがちな人は、今が見直すきっかけだと思って、これまで以上に生活リズムを意識してみてください。 ――イベントがなくなって「無気力状態」に陥るほど趣味に没頭すると、メンタルにどのような影響を与えるのでしょうか? 木村 日常生活において「没頭できる趣味がある」ということは、メンタルにはとてもいいことです。私は普段の診察でも、適切な食事、睡眠、運動といった習慣のほかに、趣味を持つことを促します。むしろ、趣味がない人はうまくリフレッシュすることが苦手な場合が多いため、精神衛生上は無趣味のほうがよくないといえます。イベントが突如中止になり、無気力になってしまうということは、「そこまで没頭できる趣味が自分にはあったんだ」とプラスに捉えましょう。 ただし普段の生活で、その趣味だけに時間を割くのではなく、友人と話したり、ほかのことにも興味を持っておくことは重要です。その趣味“だけ”の生活を送っていると、今回のような事態によってできた心の穴を埋めるすべが見つからず、無気力状態に陥りやすくなります。とはいえ、ほかに趣味が見つからない人もいるでしょう。その場合は、趣味について友人・知人と話して心情を共有すれば、無気力になりにくいです。 ――「何もしたくない」ほど落ち込んだときは、無理やりにでも活動して、気分転換したほうがよいですか? 木村 無気力状態のときに無理をして何かをしようとすることは、得策とはいえません。たとえ行動したとしても、「自分はどうして楽しめないんだろう……」と考えてしまい、逆効果になることがあります。また、無気力状態のときは、普段より疲労を感じやすくなっているので、まずは十分な休養を取ることが大事。「何かしてみよう」と自ら気持ちが動くまでは、“充電期間”と捉えて、ゆっくり休んでみてください。 ■木村好珠(きむら・このみ) 精神科医、産業医、健康スポーツ医。慶應義塾大学病院研修修了後、都内クリニック、静岡赤十字病院で勤務。現在は東北の病院にて常勤医、静岡県内の病院、 東京・金王坂クリニックにて非常勤医。メンタルやストレスに関しての治療を得意分野とし、疲労、更年期の悩みなどに対して、精神薬だけでなく漢方を取り入れて治療を行っている。また、アスリートへのメンタルサポートにも注力し、東京パラリンピック ブラインドサッカー日本代表のメンタルアドバイザーとしても活動中。 最終更新:2020/03/19 16:30 楽天 睡眠こそ最強の解決策である こんなときこそボーッとしよう! 関連記事 「不快な思いをさせてすみません」への違和感――指原・喜多村“テンプレ謝罪”を心理学でひもとく中居正広、SMAP時代の葛藤が「大きく残っている」? 精神科医が退所会見から心理を分析映画『キャッツ』の猫は、なぜ「不気味」で「気持ち悪い」のか? 認知心理学の研究者が考察「嵐のために」は危険! 二宮和也の結婚から不仲説……心理学博士が「グループ分裂危機」説に助言新型コロナで開催揺れる東京五輪、パラ・メンタルコーチが「選手の心身」に及ぼす影響を解説 次の記事 北山&藤ヶ谷の曲に「エロい」「失神」 >