サイゾーウーマンカルチャーインタビュー“健常者”の「私たちも頑張ろう」への違和感 カルチャー 『きらめく拍手の音』イギル・ボラ監督インタビュー “健常者”の「寄付したら偉い」「私たちも頑張ろう」とは――ろうの両親を持つ映画監督が語る違和感 2019/08/24 22:30 斎藤香 インタビュー 視覚、臭覚、触覚が研ぎ澄まされている、ろう者の美しい世界 ――ご両親は、娘であるボラ監督が作った自分たち夫婦の映画を見て、どんな感想をもたれましたか? ボラ監督 すごく喜んでいましたが、母は「おなかの肉がはみだしているところが映ってる!」とか「お化粧もしてないのにカメラを回している!」とか、いろいろ言っていましたけど(笑)。でも、両親は文字が読めないから視覚で情報を得るのが日常なので、手話言語の映画を娘が作ったことが、とてもうれしかったようです。 ――映画を見ていると、ご両親は行動的で社交的。毎日をイキイキと暮らす姿がとても素敵だと思いました。ボラ監督自身、ご両親の影響を受けていると思うことはありますか? ボラ監督 私の両親は、何事も目で見ないと信用しません。それはろう者の特徴でもあるのですが「実際に見て、やってみないとわからない」という考えなのです。行きたい場所へ行ってみる、やりたいことをやってみるという、目で見て体で覚えていくのが両親の生き方です。そういう人たちに育てられたので、私もまず「実際に見たい、体験したい」というタイプです。だから高校生のとき「もっと世界を見てみたい。学びたい」と思って、学校を辞めて世界へ飛び出しました。実際にそうして良かったです。多くの人に出会えましたし、学びもたくさんありました。それは私にとって財産です。 ――この映画をどんな人に見てほしいですか? ボラ監督 新しい世界に出会いたいと思っている人ですね。この映画は、障害者の映画でもないし、教育の映画でもないと思っています。本作は新しい世界に関する映画です。視覚、臭覚、触覚が研ぎ澄まされている、ろう者の美しい世界を見たいと思っている人にぜひ見てほしいです。 (斎藤香) 『きらめく拍手の音』 ボラ監督が、両親の過去から現在までをひもといていくドキュメンタリー。家族を通して、ろう者の生活の真実にスポットを当てていく本作は、音が聞こえない不自由さではなく、工夫を凝らし、前向きにハッピーに生きる毎日が映し出されている。 監督&出演:イギル・ボラ 出演:サングク(父)ギョンヒ(母)グァンヒ(弟) ・公式サイト イギル・ボラ監督 18歳で高校を中退して、東南アジアを旅しながら、旅の過程を記録した中編映画『Road-Schooler』(2009)を制作。その後、韓国国立芸術大学に入学してドキュメンタリー制作を本格的に学ぶ。本作は山形国際ドキュメンタリー映画祭2015アジア千波万波部門で特別賞を受賞した。 前のページ123 最終更新:2019/08/24 22:39 関連記事 「障害者について知らないからこそ、怖いと思っていた」社会が変わるために必要なこととは?障害者の「選択肢」を増やす――放課後デイサービスと就労継続支援B型事業所がもたらすもの「精神障害者になると思ってなかった」当事者が語る生活保護受給者の実情『24時間テレビ』「感動ポルノ」を障害者はどう見るのか?――バニラ・エア騒動の木島英登氏に聞く『24時間テレビ』に登場しない障害者……精神障害や発達障害はなぜいない? 次の記事 ジャニーズ公式チャンネルが波紋 >