オンナ万引きGメン日誌

板野友美似の美少女万引き犯に、店長デレデレで「警察呼ばなくていい」――保安員が見た顛末

2019/08/10 16:00
澄江

 こんにちは、保安員の澄江です。

 ようやくに梅雨明けしたかと思えば、凄まじく暑い日々が続いていますね。丈夫な体だけが自慢の私ですが、つい先日、生まれて初めて熱中症にかかってしまいました。最寄り駅から現場に向かう道中、緩やかに続く長い坂道と路面の照り返しに体力を奪われて意識が朦朧とし、事務所に到着すると同時に手足が痙攣して動けなくなってしまったのです。油断することなく日傘を差し、水分補給もしっかりしていたのに、この結果。エアコンの効いた涼しい休憩室で、しばらく横にならせてもらうことで回復できましたが、人通りの少ない路上で倒れていたらと思うと、ぞっとします。私が子どもの頃は、気温が30度に達することさえ珍しかったものですが、いまや40度を超える勢いとなりました。命がけで通勤する時代を迎え、地球環境の大きな変化をあらためて痛感した次第です。

 環境の変化といえば、最近の日本国内は、どこにいっても外国人の方が多いですよね。私たちの現場も同様、ここ数年、まったく喜ばしくない形で国際交流してきました。これまでの経験からすれば、ベトナム、中国を筆頭に、韓国、北朝鮮、フィリピン、タイ、インド、ブラジル、アメリカ、モンゴル、ロシア、ウクライナなどの国籍を持つ万引き犯を扱った経験があります。語学留学生による換金目的の大量盗難や、万引きで商材を仕入れる自営業者の犯行が目立ちますが、観光目的で来日した外国人による犯行も珍しくありません。今回は、とある高級スーパーで捕らえた異国の万引き犯について、お話していきたいと思います。

 当日の現場は、K市にある高級スーパーS。治安が悪いことで有名な街の中心部にある店舗は、国際空港に近いため外国人観光客の姿も多く、私からすれば、行けば何かが起こるお店の一つです。この日も、勤務開始からまもなく、いくつかの惣菜パンをポケットに隠して外に出たホームレスのおじさんを捕捉しました。いわゆる食うに困っての犯行とは言え、失うものがない人特有の全てに投げやりな態度が、志願兵(自ら進んで刑務所に入ろうとする人)の雰囲気を漂わせています。逮捕されれば、寝食の確保はできる。そんな発想で万引きしているようですが、たとえ逮捕要件(カネなし、ヤサなし、ガラウケなし)が揃っているとしても、本人が刑務所入りを希望するほど逮捕してもらえないものなのです。

「今日は別件もあって忙しいし、こいつらは娑婆にいた方がつらいから、タレ(被害届のこと)は勘弁ね」


 結局、今回も被害届の代わりに、被害申告の意思がない旨が記された上申書に店長が署名することで、全ての処理は終了しました。買取不能の被害品は、もれなく廃棄されます。どうせ捨てるなら、食べさせてあげたい。毎回、そんな気持ちに駆られますが、そういうわけにもいきません。食べる予定だった被害品が、次々と捨てられていく光景を見つめるおじさんの目が、食べ物の恨みの恐ろしさを物語っているように思いました。

「お前、この店、永遠に出禁だから。二度と来るなよ」

 罪を許されたおじさんは、自分より若い警察官に激しく罵倒された後、店の外に出たところで解放されました。こうした光景を目にするたび、まともに扱われず開放された被疑者が、より大きな罪を犯さないか心配になります。

(なによ、少しも座れないじゃない……)

 警察が扱うことなく、商品の買取すらかなわない結末は、重い徒労感だけを残します。仕方なく現場に戻って巡回を再開するも、どうにもやる気が湧かずに、大過なく時間は過ぎていきました。


万引き防止対策に関する調査と社会的実践