インタビュー

精神科医が語る「引きこもり」に見られる6つの精神状態と、「犯罪者予備軍」の論調が危険なワケ

2019/06/24 17:30
サイゾーウーマン編集部(@cyzowoman

 「引きこもりは犯罪者予備軍」――ここ最近、メディアではそんな論調のニュースが目立っている。5月28日、神奈川県・川崎の登戸駅付近の路上で、スクールバスを待っていた私立カリタス小学校の児童や保護者らが、51歳の男に相次いで刺され、19人が死傷するという痛ましい事件が起こった。加害者である岩崎隆一容疑者は自ら首を切って自殺し、現在警察が、動機の解明を進めている。

 そんな中、メディアでは、岩崎容疑者が長年、引きこもり状態にあったことに着目。幼い時に両親が離婚、伯父夫婦と同居するようになり、事件当時も80代の伯父夫婦と3人で暮らしていたが、「コミュニケーションはまったくない」状態だったと、こぞって報じた。

 こうした中、6月1日には、元農林水産省事務次官・熊沢英昭容疑者が、引きこもり状態にあった44歳の息子を殺害するという事件も発生。家庭内で暴力を振るっていた息子が、「小学校の運動会がうるさい」と言い出したことで口論になり、殺害に及んだとみられ、熊沢容疑者は、「川崎市登戸の事件が頭に浮かび、同じようにならないように考えた」といった趣旨の供述もしているそうだ。

 熊沢容疑者の事件は、「引きこもりは犯罪者予備軍」というニュース報道が少なからず影響したという見方もあり、世間ではメディアに対して「引きこもりの当事者や家族を追い詰めないで」といった批判の声が飛び交うことに。しかし一方で、「引きこもり状態の人が凶悪事件を起こしたということに違いはない」といった指摘も出ている状況だが、これまで多くの引きこもりの当事者やその家族と接してきた精神科医は、「引きこもりは犯罪者予備軍」という意見をどう見るのか。『怖い凡人』(ワニブックス)や『一億総他責社会』(イースト・プレス)などの著者である精神科医・片田珠美氏に話を聞いた。


被害者のふりをせずにはいられない人